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溺愛しゅかゆづ夫婦 3

 この季節、気を抜くと『あれ』にくわれて、
 かゆくてかゆくて仕方なく、塗り薬となるとにおいが苦手で。
 ……というトラブルに、僕は、悩まされない。
 昔はひどかったけれど、今は朱夏のおかげで。
 僕を溺愛する朱い龍の神さまは、あらゆるものから僕を護ってくれる。
 ひとたび『あれ』が羽音をたて、近づくものなら、
 朱夏がそれを一瞥し、そうしてはたき落としてしまう、らしい。
 そう彼から聞いているだけの僕だけれど、実際、『あれ』にくわれることはなくなった。
 この季節は暑いし、そういうのもいるしで、あまり好きじゃなかった。だから、朱夏には感謝ばかりがある。

「俺の大切な弓弦の肌に触れて、血を吸って、なんて。そんなことをこの俺が許してやるわけないでしょう」

 朱夏は続けて言った。

「弓弦をくっていいのも俺だけですし」

 ……ふふ、どうやら僕は、彼にくわれてしまうらしい。
 こわいなあなんて棒読みで。僕を抱きしめる朱夏に、僕からもぎゅっと抱きついて。
 僕にだけ優しい龍。僕を護ってくれる、格好いい旦那さま。
 僕も僕なりに、貴方を、あらゆるものから護れたら良いのだけれど。
 蚊取り線香とかで。彼こそ『あれ』にくわれることはないわけだけど。
 まあ、なにはともあれ、

「朱夏。すき」
「ふふ、俺の方が大好きです」


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