溺愛しゅかゆづ夫婦 3
俺、弓弦に着てもらいたい服があるんです。
出来心というか、彼女なら絶対に似合うだろうなと思って買った一式で
猫耳に猫のしっぽ付きのメイド服なんですよねえ。
弓弦は恥ずかしがり屋で、たぶん『僕には似合わないよ』と言ってしまうので
まったくそんなことはないし、むしろこの世で貴女以外に似合うひとなんて俺にとってはいませんよって話なんですが、
彼女の大切な言葉やくちびるから、僕なんて、って言わせたくないじゃないですか。
だから彼女がうまく納得してくれるように、
かつ、もともと俺がやってやりたかったこと。
そう、それは。
「弓弦。今日はゆっくりしていてくださいね」
「? どうしたの、朱夏」
休日、弓弦より早起きをし、朝ごはんを作り
食後のホットレモンティーを飲む弓弦に、きょとんとされて
掃除に洗濯、弓弦が届かないような高いところの棚を少し整理したり
買い物にも行って、夜ごはんのメニューも決めて、今日は俺が作りますからねって。
そのたびたび手伝おうとしてくれる弓弦を、
「これは俺がやりたいことですから」ってやんわり座らせて
――ん? いいえ、貴女が毎日してくれる家事、とっても完璧ですよ。これは俺のわがままなんです。
そんな不安そうな顔をしないでください、弓弦。
大丈夫、俺に任せてくださいね。
「弓弦。貴女にお願いがあるんです」
夜ごはんを作る前。
リビングで、改めて弓弦に向き直る。弓弦が、心待ちにしていたとばかりに、なにかと聞いてくる。
その目は真剣で、生真面目だ。
俺の手伝いをなんでも、と、たぶん思っている。だからちょっとだけ、申し訳ない気持ちになりながら。
「これを着てほしいんです」
「……へ? 着る? ……な、なにこの……」
「俺、今日頑張ったでしょう? だから、ご褒美が欲しいです」
差し出す、白猫メイドセット。
ご褒美をもらうため、そしていつも頑張ってくれている弓弦に休んでほしいため。
頑張った俺への報酬だと言えば、彼女も気が楽かなと思いもしました、けれど。やっぱりちょっとずるでしたかね。
彼女は、とってもぽかんとして、
「……ははっ、うん、いいよ」
ちょっと珍しい、かわいい笑い方と、ふたつ返事。
服を受け取って、「ちょっと待ってて」と、寝室へぱたぱた走るすがた。
ああ、転んでしまいますよ弓弦、……どうしましょうか、俺
とっくのとうに弓弦が可愛くていとおしくて、
もちろんあれを着てきてくれるのも楽しみで、
どきどきしまくる心臓が、このまま爆発してしまうかもしれません。
「お、おまたせ、朱夏……どう、満足なの」
「…………」
「……朱夏?」
戻ってきた弓弦は――
ふわりと編んだベージュ色の髪、頭のてっぺんに、白猫耳つきフリルのカチューシャ。
フリルでいっぱいのメイド服、短いスカートに
白いしっぽがきちんと立って、その先端には黄色のリボン。
赤い首輪の鈴をちゃりんと鳴らし、
真っ赤っかで、俯きがちで、恥ずかしがる可愛い顔。
戸惑いながらの上目遣い。心なしか潤んでさえ見える赤い瞳が、おそるおそると俺を見る――。
「ねえ朱夏、あっ、こら! 無言で撮るな!」
あまりの可愛らしさに言葉が破壊されました。
カシャリカシャリカシャリ、スマホでたくさん彼女を撮る。照れた顔も、怒ったような、むっとした顔も。
ねえ弓弦、このあとはオムライスを作る予定だったんですが、
だいぶあとでも良いですか……?
「弓弦、愛しています。似合っています、本当に、ああもう可愛いな……。
貴女が俺だけの大切なひとで良かったです……」
スマホはポケット。
しっかり着こなしてくれた弓弦を、そっと、そっと、崩したり壊したりしてしまわないように抱きしめて
「ふふ、なんだそれ。でもまあ、貴方が喜んでくれているならよかった」
彼女はくすくす笑い、俺を抱きしめ返してくれる。
ぽんぽんと俺の背中をたたき、あやすように。
俺の頭や心は、ずっとときめいてばかりいて、彼女のことが大好きで大好きで、
生まれてきてよかったとか、生きていてよかったとか
貴女と出逢えて本当に幸せで、たまらなくて、とか
貴女が聞けばまた『大げさ』って笑うんでしょうね。照れくさそうな頬笑みを浮かべて。
けれど、まったく大げさなんかじゃないんですよ。
ねえ弓弦。
俺だけの白猫メイドさんで、俺だけの大切な花嫁。
出来心というか、彼女なら絶対に似合うだろうなと思って買った一式で
猫耳に猫のしっぽ付きのメイド服なんですよねえ。
弓弦は恥ずかしがり屋で、たぶん『僕には似合わないよ』と言ってしまうので
まったくそんなことはないし、むしろこの世で貴女以外に似合うひとなんて俺にとってはいませんよって話なんですが、
彼女の大切な言葉やくちびるから、僕なんて、って言わせたくないじゃないですか。
だから彼女がうまく納得してくれるように、
かつ、もともと俺がやってやりたかったこと。
そう、それは。
「弓弦。今日はゆっくりしていてくださいね」
「? どうしたの、朱夏」
休日、弓弦より早起きをし、朝ごはんを作り
食後のホットレモンティーを飲む弓弦に、きょとんとされて
掃除に洗濯、弓弦が届かないような高いところの棚を少し整理したり
買い物にも行って、夜ごはんのメニューも決めて、今日は俺が作りますからねって。
そのたびたび手伝おうとしてくれる弓弦を、
「これは俺がやりたいことですから」ってやんわり座らせて
――ん? いいえ、貴女が毎日してくれる家事、とっても完璧ですよ。これは俺のわがままなんです。
そんな不安そうな顔をしないでください、弓弦。
大丈夫、俺に任せてくださいね。
「弓弦。貴女にお願いがあるんです」
夜ごはんを作る前。
リビングで、改めて弓弦に向き直る。弓弦が、心待ちにしていたとばかりに、なにかと聞いてくる。
その目は真剣で、生真面目だ。
俺の手伝いをなんでも、と、たぶん思っている。だからちょっとだけ、申し訳ない気持ちになりながら。
「これを着てほしいんです」
「……へ? 着る? ……な、なにこの……」
「俺、今日頑張ったでしょう? だから、ご褒美が欲しいです」
差し出す、白猫メイドセット。
ご褒美をもらうため、そしていつも頑張ってくれている弓弦に休んでほしいため。
頑張った俺への報酬だと言えば、彼女も気が楽かなと思いもしました、けれど。やっぱりちょっとずるでしたかね。
彼女は、とってもぽかんとして、
「……ははっ、うん、いいよ」
ちょっと珍しい、かわいい笑い方と、ふたつ返事。
服を受け取って、「ちょっと待ってて」と、寝室へぱたぱた走るすがた。
ああ、転んでしまいますよ弓弦、……どうしましょうか、俺
とっくのとうに弓弦が可愛くていとおしくて、
もちろんあれを着てきてくれるのも楽しみで、
どきどきしまくる心臓が、このまま爆発してしまうかもしれません。
「お、おまたせ、朱夏……どう、満足なの」
「…………」
「……朱夏?」
戻ってきた弓弦は――
ふわりと編んだベージュ色の髪、頭のてっぺんに、白猫耳つきフリルのカチューシャ。
フリルでいっぱいのメイド服、短いスカートに
白いしっぽがきちんと立って、その先端には黄色のリボン。
赤い首輪の鈴をちゃりんと鳴らし、
真っ赤っかで、俯きがちで、恥ずかしがる可愛い顔。
戸惑いながらの上目遣い。心なしか潤んでさえ見える赤い瞳が、おそるおそると俺を見る――。
「ねえ朱夏、あっ、こら! 無言で撮るな!」
あまりの可愛らしさに言葉が破壊されました。
カシャリカシャリカシャリ、スマホでたくさん彼女を撮る。照れた顔も、怒ったような、むっとした顔も。
ねえ弓弦、このあとはオムライスを作る予定だったんですが、
だいぶあとでも良いですか……?
「弓弦、愛しています。似合っています、本当に、ああもう可愛いな……。
貴女が俺だけの大切なひとで良かったです……」
スマホはポケット。
しっかり着こなしてくれた弓弦を、そっと、そっと、崩したり壊したりしてしまわないように抱きしめて
「ふふ、なんだそれ。でもまあ、貴方が喜んでくれているならよかった」
彼女はくすくす笑い、俺を抱きしめ返してくれる。
ぽんぽんと俺の背中をたたき、あやすように。
俺の頭や心は、ずっとときめいてばかりいて、彼女のことが大好きで大好きで、
生まれてきてよかったとか、生きていてよかったとか
貴女と出逢えて本当に幸せで、たまらなくて、とか
貴女が聞けばまた『大げさ』って笑うんでしょうね。照れくさそうな頬笑みを浮かべて。
けれど、まったく大げさなんかじゃないんですよ。
ねえ弓弦。
俺だけの白猫メイドさんで、俺だけの大切な花嫁。
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