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溺愛しゅかゆづ夫婦編 2 (NL)

「六月も終わりなんだな」

 弓弦はカレンダーを眺める。ぽつり、寂しそうに呟く。
 彼女がなにを寂しがっているのか、俺には理解できる。
 だから、彼女の細い体をぎゅっと抱き寄せて、大丈夫ですよと囁いた。

「七月だって八月だってなんだって、俺は変わらず貴女が好きですよ」

 六月はたくさんの思い出がある。
 俺が弓弦とはじめて出逢った月。俺と弓弦が夫婦になった月。結婚旅行も行きましたね。
 でも、いつだってどんな時だって、弓弦との日々は、大切な思い出でいっぱいなのだから。

「俺が貴女を護って、一緒にいて、底なしに愛し続けてさしあげます」

 ほら。寂しくないでしょう。
 弓弦を膝の上に座らせ、思うままに話していたら、彼女がふいにくすっと笑った。
 ゆっくり身じろぐ可愛らしさ。俺を見上げる綺麗で可憐な顔と、吸い込まれそうなほどに眩く耀く、彼女の真っ赤な瞳。
 ただただ、見惚れる。魅入られる。
 俺だけの、愛しい弓弦。

「うん」

 彼女はふわりと微笑んだ。

「朱夏がいてくれるから、寂しくないな」

 きらきら。彼女は美しい。たとえば夜空の星よりも、青空を落とし込んだ水面よりも。
 微笑む顔、やわらかい声、そっと俺に寄りかかり、預けてくれる体。
 彼女のすべてが、こんなにも。

「――ええ、寂しい思いなんてさせません」

 俺は一度、息を呑んだ。彼女を俺の力のままに掻き抱きたい、そんな衝動を抑え込んだ。
 そして、あくまでも優しく、大切に大切に弓弦を抱きしめ、彼女と一緒に笑った。

 六月の終わりはもうすぐそこ。
 弓弦との愛しい日々は、変わらず続いていく。


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