溺愛しゅかゆづ夫婦編 2 (NL)

 朱夏は龍神さまだから、
 なんだか不思議なことが色々とできる。
 魔法というのか、妖術というのか、はたまたまさしく神業なのか
 僕にはよくわからないけれど。

 彼が自分の髪をぷつり、
 ひといと引き抜き、宙に放り流すだけ。
 ただそれだけで、ぽんっと現れる赤い龍。
 僕と朱夏は、その子をいつも『ちび』と呼ぶ。

 お仕事帰りの朱夏がお風呂に入っているあいだ、
 ちびが晩ご飯の準備を手伝ってくれていた。
 おかげであっという間に準備ができて、あとは朱夏だけ。
 リビングのソファで、甘えてくるちびをよしよしいい子としていたら、

「あっ、この、ちびのくせに。弓弦は俺だけの花嫁ですよ」

 やがて戻ってきた朱夏が、すぐさまちびを睨む。
 コピーもどきのちびのくせに、なんて、ひどい言い様。朱夏は僕以外のものに、本当に容赦がない。
 ちびもちびで朱夏をモチーフにしているだけあってなのか、ぎろりと冷たい金の瞳を、同じ色の瞳で負けじと睨み返していて、
 ああこれ。世界でいちばん不毛な喧嘩になるなあ。
 朱夏もちびも、ほとんど同一人物……同一神さま? なのに。

「もう、どっちもだめ」

 朱夏に噛み付こうとするちびと、
 ちびを握り消してしまおうとする朱夏、
 そのあいだに入り込む。
 ちびを両腕にぎゅっと抱きしめ、
 そんな僕は、朱夏の腕の中。
 僕と同じ香りのする胸に飛び込んだら、
 唐突なのに、ふわり。
 とても優しく抱きとめてくれる。

「弓弦」
「貴方たち。僕に怒られたいの」

「きゅう」とひとつ鳴くちび。
「すみません」と眉を下げる朱夏。
 どちらもしょんぼりしていて、わかってくれたようだから

「……落ち着いた? いいこ」

 ちびの頭をそっと撫でて、
 朱夏のくちびるに(頑張って背伸びをして)キスをして
 さあ、ほら。ご飯にしよう。
 ぱああっと同時に顔を明るくするその様子、とっても似ていて、愛おしいよ。
 どちらも僕の大好きな朱夏だ。


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