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溺愛しゅかゆづ夫婦編 2 (NL)

 弓弦はやけに自信がないところがあって、
 たとえば、彼女は見た目も中身もとてもきれいで可愛らしいひとだから
 今日も可愛いですね、その服も似合っていますねって、心から褒めただけなのに

「気持ちは嬉しいけれど、大袈裟だよ」

 なんて言われてしまうことがままあって。
 そのたび俺は、なんにも大袈裟なことはなく、彼女がどれほど可愛いひとなのかを力説するけれど、

「っ、もういい、じゃあそこで待っていろ」
「? はい」

 なにやら待つこと数分。
 別室から戻ってきた弓弦は、先ほどと衣服が変わっていた。
 純白のワンピース。真っ白で大きな帽子。
 ふわふわなベージュの髪の三つ編みは、黄色いリボンで結ばれて。

「どうだ、これならさすがの貴方も、似合っているとか言えないだろう」

 いや、何故?
 そんなへんなところで負けず嫌いを発動させなくても、というか。そういえば確かに、彼女は、そういう雰囲気の服をあまり着たがらないけれど。

「めちゃくちゃきれいで似合っていて、いわゆる天使って貴女のことなんですね」
「……は?」
「可愛いですよ、弓弦。もっとよく見せてください。ああそのまえに、いますぐ思いっきり抱きしめてしまいたいです」
「ええと、朱夏、ちょっ……わぷ」

 とまどう様子さえも可愛い。
 可愛い、かわいい、俺だけの花嫁。俺だけの弓弦。今日も彼女は本当に愛しい。へんに自信がないところも、へんなところで負けず嫌いなのも、いじっぱりなのも。全部。

「朱夏、加減……っしゅか」

 ぜんぶぜんぶ愛おしくて――つい。
 俺は慌てて腕の力を弱める。すみません、弓弦、大丈夫ですか。問いかけながら、彼女を離すことはできないでいる。
 へろり、俺に身をあずけた弓弦が、

「……僕が悪かった、ごめん」

 貴方がなんでも僕を肯定してくれるから、つい、どこまでそうしてくれるのかなと思ってしまって――なんて。
 ぽつりぽつり言いながら、俺の背中をきゅっと抱きしめ返す。その不安げな力加減、声色、不器用な甘え方。
 俺は、あははっと笑った。
 このひとがどこまでも、どこもかしこも、愛おしくて可愛くてたまらない。

「大好きです」
「うん、……僕も」

 キスをしようとしたら、めずらしく彼女から。
 一生懸命背伸びする弓弦に、先を越されました。


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