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溺愛しゅかゆづ夫婦編 (NL)

 ストロベリームーンというらしい。
 雨上がりの晴れた夜空に、それは煌々と浮かんでいる。
 そのもの自体に興味はなかったけれど、そうだな。良いな、とは思う。
 だって、

「貴女の瞳の方がきれいですね、弓弦」

 まん丸で赤い月。
 それよりも真っ赤で美しい、俺の隣の愛しいひとの眼。
 ふっと空から逸らされ、俺を見る。ああほら、本当にきれいだ。どんなものよりも鮮やかで。
 あの月も、弓弦の瞳をより美しいと思わせるもの。そういう意味で、良いなあと。

「朱夏、貴方は、いつも唐突だな」
「嫌ですか?」
「……ううん」

 わざとらしく訊く。
 かあ、と頬を赤らめながら、彼女は首を横に振る。
 言葉は続かない。そのかわり、俺を一生懸命に見上げる、饒舌な瞳。弓弦からの期待。
 ――今日も世界で一番に愛おしいひと。俺だけの、可愛らしい花嫁。
 そっと彼女に口づけを落とす俺は、あそこの月のことなんか、もうとっくに忘れている。
 最も美しいこのひとの赤を、その眼差しを、もっと欲しい。


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