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溺愛しゅかゆづ夫婦編 (NL)

『帰ります。欲しいものはありますか?』

 仕事上がり。弓弦のにゃいんにメッセージを送っても、どうも既読がつかない。
 寝ているのかもと思って、龍のすがたで空をひとっ飛びして。家に帰ったら、弓弦はやっぱり、ベッドの中でぐっすりだった。

 俺は、なるべく足音をたてないように気をつけつつ、身の回りを整える。
 手を洗ったり、部屋着に着替えたりして、改めて寝室のベッドを覗き込んだ。
 すうすうと寝息をたてている弓弦は、とても珍しいことに熟睡している。『朱夏の髪の色みたい』だと言って気に入りの、赤い抱き枕に埋もれるみたいにして。

 よかった、ちゃんと家にいてくれた。
 弓弦は眠りが浅く、悪い夢を見ることも多い。だから、気持ちよさそうに眠っている様子は、とても嬉しい。
 そんなような、たくさんの安堵に、思わず笑みがこぼれる。彼女の頬や髪を撫でたり、キスをしたり、そっと抱きしめたくなるけれど。
 それらの愛おしい衝動を堪えて、今はまだ、ベッドの傍ら。愛する弓弦の可愛らしいすがたをこの目に焼き付けて、可愛いな、大好きですと心の中で繰り返している。

 もう少ししたら、ゆっくり起こしてやりましょう。
 夕ご飯、俺が作ってやりたいな。でも生真面目な弓弦のことだから、僕が作ると言って聞かないかもしれません。
 そうしたら、ふたりで食事の支度ができますね。
 それもまた良いな――あ、弓弦、

「んにゃ……ふふっ……しゅか、すき」

 んにゃんにゃ。寝言も、微笑む顔も、何もかもが可愛らしい。
 俺は思わず額に手をあてました。おお神よ、というやつですか。俺も龍神ですけど。
 こんなにも可愛くて愛おしくて堪らない存在が、この世に存在するんです。
 それは俺の花嫁なんです。俺だけの花嫁。俺だけの、愛しい弓弦。

 弓弦、今日も貴女のことが大好きです。


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