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溺愛しゅかゆづ夫婦編 (NL)

 六月の真ん中のあたり。毎年、大体、梅雨の時期。
 深夜、時計が零に重なって、日付けが変わったら。
 ……今日は、僕と朱夏の結婚記念日。

「弓弦」
「なあに、朱夏」
「おめでとうございます」
「ふふ。うん、おめでとう」

 静かな夜だ。窓の外からは、深々と、雨の音。
 僕たちのためのダブルベッドの中で、のんびり今日を待っていて、そのまま。
 お互いを見つめ、やわらかく言葉を交わし、どちらともないキスをした。

「ん、……ぷは」
「ふ。弓弦、いつも――」
「朱夏。いつもありがとう」
「あ、先越された」

 ふふ。今年は僕の勝ち。
 悔しそうな朱夏が、僕の唇にかぷっと噛みつく。
 二度目のキスは少し荒くて、

「……ふ。弓弦、こちらこそ、ありがとうございます。俺に愛されてくれていて。俺を愛してくれていて」

 息継ぎをしたと思ったら。真っ直ぐな言葉たちと、彼の金色の瞳。
 ふわりと花咲くように笑う朱夏に、目も心も強く強く奪われる。深くまで惹かれて、どきどきと、胸が躍って。

「……こちらこそ」

 こんな僕を愛してくれて、
 こんな僕に愛されてくれて――。
 ああもう。先に『ありがとう』を言ったのは僕なのに、今年は僕の勝ちだったのに、これじゃあ負けに等しいじゃないか。
 もう。

「弓弦、愛しています」
「うん。僕も。朱夏が、すき」

 僕の左手をおもむろに引き寄せる朱夏が、薬指の指輪にまでキスをする。
 ちゅっと愛おしい音がする。きらきら、とても綺麗だ。朱夏が贈ってくれた結婚指輪も、ゆらめく彼の真っ赤な髪も。彼の一挙一動、すべてが。

 それ、僕もする。
 ふっと湧き上がる対抗心。愛しい衝動。
 朱夏の左手をとり、お揃いの結婚指輪に、たくさんの想いを込めたキスを。

 朱夏と過ごす日々が、こんなにも愛おしいことを。


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