溺愛しゅかゆづ夫婦編 (NL)

 夜、いつものように弓弦を膝に座らせ、抱きしめて。
 至福の時間に浸っていると、弓弦が、

「ねえ朱夏、今日、なんの日か知っている?」

 俺は。ちょっとばかり不意をつかれたけれども、ぐるりと廻る頭で思い当たるものを見つけ、
 ああと笑ってみせたところで、弓弦が俺の耳もとで答え合わせをした。
 まるで内緒話をするみたいに。先を越してやろうって負けず嫌いを存分に発揮して。

「恋びとの日らしい、……あ。だけど、」

 僕たちは夫婦だから、もしかして、関係ないのかな。
 俺を見上げながらつぶやく彼女は、ちょっと眉を下げ、さみしそうだった。
 今度は俺が内緒話みたいに声を潜める番で、

「関係ないわけないですよ。俺は毎日毎秒、貴女に恋に落ちています」
「っ、また、そう……大げさ」
「大げさじゃありません」

 恥ずかしがり屋な弓弦が、真っ赤な顔を伏せたがるのを、当然阻止して。
 さあ、じゃあ。ちっとも大げさじゃないことを、まずはどんなふうにかたちで伝えようかなあって。
 彼女の可憐なくちびるに噛み付くようなキスをして――まだまだ夜はこれから。
 先を越されてしまったぶんまで、愛して差し上げます。


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