溺愛しゅかゆづ夫婦編 (NL)

 新しく、パジャマを買った。
 朱夏とお揃いっぽく選んで、家に帰って、さっそく着替えてみる。僕のパジャマは白色、朱夏はグレー。フードをかぶってみると、なるほど、お揃い……? なのか?
 僕のパジャマは猫耳がついていて、朱夏の方は狼っぽかった。ぴん、と大きめに立ったするどい両耳。朱夏がいたずらに「がおー」と言って、ああやっぱり、犬というより狼だよなと思う。
 こういうときのお揃いと言えば猫と犬。なんて先入観があったけれど、まあ、狼は犬の祖先なのだし。どちらにせよ朱夏に似合っているからいいか、なんて納得した。

「俺、龍なんですけどね」

 朱夏は朱夏なりに思うことでもあったのだろうか。
 フードの耳に触れ、ふいに呟く。まあいいんですけど、と言葉が続きそうな平坦な声色に、ちょっと笑ってしまう。そうだな、でも似合っているよ。
 僕が褒めると、ひとの姿の龍神さまは「ふふん」と笑った。誇らしげな笑顔のまま、川に流れる水のような自然な動作で、僕を抱き寄せる。

「貴女もとっても似合っていますよ。弓弦。可愛くて可愛くて、頬ずりしたくなっちゃいます」

 言いながら、すりすり、僕に頬を寄せる。とっても大きな犬みたいだと思った。
 しちゃいたくなるもなにも、頬ずりしてるじゃないか。なんて僕は笑って、朱夏の頭をフード越しに撫でる。
 買ってみてよかった。ぶかっとするデザインで、着心地も楽でいいし。
 パジャマすらばっちり着こなす朱夏は、今日もいちいち格好いいし。
 彼は龍だけど。


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