このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

しゅかゆづ てのひら編

 寝室は蒸し暑い、
 窓の向こうの虫の声が、奇妙にくるくる回ってる。
 寝つけなくて幾度と寝返りをうって、
 それもいよいよ嫌になった頃。

「少し散歩に行きましょうか?」

 見かねた貴方が僕の手を引き、
 気だるげに閉ざされた窓を起こしてこうべを垂れさせたら
 彼は僕を抱きしめて、夜の中に飛び込んだ。
 まっさかさまの僕たちは、ぐちゃりとつぶれるトマトの時間を遡るみたいに、
 きらきら、朱いひかりに包まれて
 夜空を特急列車のように駆けのぼっていく。

「寒くありませんか」

 涼しい風をシャワーのように浴びる。
 夜を往くその朱い龍は、背中の僕を心配した。

「大丈夫、――わ、これはなに?」
「ああ、星のかけらですね」

 ふいにきらきら雪のように舞うものがあり、
 どうにか手のひらにおさめてみると、それはまるで金平糖。
 金平糖って、星のかけらだったの?
 そうかもしれませんね、と貴方は笑う。


12/19ページ
    スキ