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しゅかゆづ てのひら編

 雨、頭痛、ひどい憂鬱感。
 僕のこのどうしようもない気だるさを、

「弓弦、ホットミルクですよ。はちみつも貴女好みの量です。
他に、俺にしてやれることありますか?」

 なんでもしますから任せてください、なんて。
 そんな朱夏に癒され、救われていく。



 ホラー映画を見た日の弓弦は、ほとんどぴったり俺に張り付く。
 いや怖くないよ、と強がるけれど。そんなところも可愛いんです。



 今夜も貴方と一緒にベッドの中で微睡みながら、
 過ぎ行く六月に手を振って、訪れる七月を迎えよう。



 そういえば、毎月、同じことをしている。
 きっかけとか、理由とか、そういうのは何だったかな。

「弓弦、手を切らないように気をつけてくださいね」
「うん」

 せーの。
 朱夏と一緒に、カレンダーを捲る。
 六月は雨と傘のイラストが描かれていた。
 七月は、ああ。竹と短冊。

 そのまま、朱夏と、ぎゅっと手をつなぎあう。
 七月になったねって笑う。そんな朝。



 理由のわからない憂鬱や不安感を、このひどい雨のせいにして。
 じゃあもういっそ、貴方に甘えたくて仕方がなくて、
 貴方がいるのにへんに寂しい僕のことも、雨のせいにできないかな。

「弓弦、はちみつのホットミルクですよ。ほら、おいで」

 ……なかなか寝室に来ないなあと思ったら、
 貴方はまた、そうやって。僕をわかって、甘やかして。
 ふわふわのベッド、貴方の膝の上、やさしい腕の中。
 ぎゅうっと抱きしめられながら、貴方の作ってくれたホットミルクを飲む。
 あまくてほわっとする愛情。幸せの味。



 ねえ朱夏、明日はなにが食べたい?
 ふたりしてベッドの中でうとうとしながら、朝ごはんの話をする。
 そうですね、一緒にホットケーキ作りませんか。


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