しゅかゆづ てのひら編
僕の悪い夢の中に射し込むぞっとするほど朱い夕陽が、
貴方がくれたお護りのくちづけだと、いまの僕には理解できる。
だから、悪夢を振り払うように立ち上がって、
貴方のもとへと目を覚ます。
大好きな貴女を抱きしめる。
俺の、掛け替えのない幸せ。
雨が躍る足先からの音が、ぱらぱら、ざあざあ、響いている。
それをぼんやりと聴きながら、
僕も朱夏も、いつまでもベッドの中で抱きしめあって、うとうと微睡んで。
赤ワインの色を見て、真っ先に朱夏の髪を思い浮かべる。
彼の髪は綺麗だ。たとえば、街を染める夕焼けよりも。
そんなところも好き、なんて。飲み込んだワインの味よりも、彼への想いに酔いしれる。
苺のショートケーキが好きです。
俺の愛しい弓弦を食べちゃっているような気分になるので。
「……じゃあ、本物は要らないの」
は? ちょっと、貴女ねえ。
そんな寂しそうな顔で、龍を煽らないでくれますか。
14/19ページ