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しゅかゆづ てのひら編


 僕の悪い夢の中に射し込むぞっとするほど朱い夕陽が、
 貴方がくれたお護りのくちづけだと、いまの僕には理解できる。
 だから、悪夢を振り払うように立ち上がって、
 貴方のもとへと目を覚ます。



 大好きな貴女を抱きしめる。
 俺の、掛け替えのない幸せ。



 雨が躍る足先からの音が、ぱらぱら、ざあざあ、響いている。
 それをぼんやりと聴きながら、
 僕も朱夏も、いつまでもベッドの中で抱きしめあって、うとうと微睡んで。



 赤ワインの色を見て、真っ先に朱夏の髪を思い浮かべる。
 彼の髪は綺麗だ。たとえば、街を染める夕焼けよりも。
 そんなところも好き、なんて。飲み込んだワインの味よりも、彼への想いに酔いしれる。



 苺のショートケーキが好きです。
 俺の愛しい弓弦を食べちゃっているような気分になるので。

「……じゃあ、本物は要らないの」

 は? ちょっと、貴女ねえ。
 そんな寂しそうな顔で、龍を煽らないでくれますか。


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