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しゅかゆづ てのひら編

 ねえ弓弦、貴女と出逢ったことで、俺がどれほど救われたと思いますか。
 救っただなんておおげさだよ、だって貴方は神さまでしょう。貴女はきっとそう言って、俺が惚れ込んだきれいな赤い目を丸くさせるんでしょうね。
 でも。なんにもおおげさじゃないんです。貴女がいてくれて、俺は。

「んん、しゅか……ふふ」

 ――あはは。なんて穏やかで無防備で、可愛らしい寝顔。ふにゃふにゃ俺を呼んで、どんな夢を見ているんですか。
 まったく妬けてしまいます。夢の中の俺自身にすら、弓弦は俺だけのものですよって、喧嘩でも売りにいきたいくらいですよ。
 おやすみなさい、また明日。




 ねえ弓弦、
 貴女は老いないし、死ぬこともない。
 龍の神と恐れられる俺が、貴女をそんなふうにした理由を、
 貴女が一番よく理解してくれるでしょう。

 それでも、たまに、少し怖くなりますよ。
 それでも、貴女が、俺から離れてしまったらって。
 貴女を抱きしめた途端、この腕から、貴女がぼろりと崩れ去ってしまったら。
 ……怖い、なんて。不安だなんて。
 こんな感情を、

「……朱夏? どうしたの」
「いいえ、貴女に甘えたいんです」

 こんな感情たちすらも愛おしいことを、

「ふふ、そう。わかった」

 いっぱいおいでと笑って俺の髪を撫でる、
 貴女のおかげで知りました。




 おやすみなさい、朱夏、また明日。
 大好きだよのキスを、たまには僕から。




 照れ屋な弓弦が珍しく、彼女からのキスをくれる。
 大好きだよ朱夏、って。
 ふわり、頬を赤らめて、あまりに愛しい。
 ……俺の心臓、破裂するかもしれません。


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