龍神さまと花嫁ちゃん(しゅかゆづ)
みなづき神社はちょっと山の中だから、基本的にあまりひとは来ないけれど、今日のそのひとはどうやら散歩途中で、偶然神社を見つけたみたいだ。
僕は鳥居の近くで葉っぱを掃いていたけれど、散歩のひとは気づかない。それもそうか、とふと思うのは、僕が意図してひとの前に姿を現さないからだ。向こうのひとに、僕は見えていない。べつに見られたいわけではなくて、まだ慣れていないんだな、と自分自身を改める。
「弓弦」
「ん、なに?」
どこからともなくふわりとやってきた朱夏が、僕を背中から抱きしめた。甘えんぼな声が可愛くて、くすぐったいなと笑う。
「こんなところにいていいの、龍神さま?」
「当然です」
「さっきのひと、たぶん、お参りしてくれるよ。……ほら」
がらんがらん。拝殿の方から、鈴の音。僕や朱夏を呼ぶ、あるいは挨拶をしてくれている合図。
それでも朱夏は知らん顔で、僕にむぎゅむぎゅ甘えていた。僕も、なにより誰よりこの龍が大好きだから、ついつい、これ以上いわずに彼の赤い髪を撫でる。
「なんて言ったかはあとで一緒に確認してみましょう? 俺は貴女に甘えたいんです。というか、べつに確認しなくてもいいですけど」
「貴方と僕のお仕事だよ」
「はあ。はあい」
朱夏は相変わらずひと嫌いというか、僕以外にちっとも興味がない。なのに、僕が頑張りたいと言うから、付き合ってくれる。まいにち大切にしてもらっている、その実感が嬉しくて、たまには僕からキスをしてもいいかな、なんて。
そんな、朱夏はきっと喜んでくれる、だろう。僕が気恥ずかしいだけで。
僕は鳥居の近くで葉っぱを掃いていたけれど、散歩のひとは気づかない。それもそうか、とふと思うのは、僕が意図してひとの前に姿を現さないからだ。向こうのひとに、僕は見えていない。べつに見られたいわけではなくて、まだ慣れていないんだな、と自分自身を改める。
「弓弦」
「ん、なに?」
どこからともなくふわりとやってきた朱夏が、僕を背中から抱きしめた。甘えんぼな声が可愛くて、くすぐったいなと笑う。
「こんなところにいていいの、龍神さま?」
「当然です」
「さっきのひと、たぶん、お参りしてくれるよ。……ほら」
がらんがらん。拝殿の方から、鈴の音。僕や朱夏を呼ぶ、あるいは挨拶をしてくれている合図。
それでも朱夏は知らん顔で、僕にむぎゅむぎゅ甘えていた。僕も、なにより誰よりこの龍が大好きだから、ついつい、これ以上いわずに彼の赤い髪を撫でる。
「なんて言ったかはあとで一緒に確認してみましょう? 俺は貴女に甘えたいんです。というか、べつに確認しなくてもいいですけど」
「貴方と僕のお仕事だよ」
「はあ。はあい」
朱夏は相変わらずひと嫌いというか、僕以外にちっとも興味がない。なのに、僕が頑張りたいと言うから、付き合ってくれる。まいにち大切にしてもらっている、その実感が嬉しくて、たまには僕からキスをしてもいいかな、なんて。
そんな、朱夏はきっと喜んでくれる、だろう。僕が気恥ずかしいだけで。