龍神さまと花嫁ちゃん(しゅかゆづ)
神社には悪いものがたくさん来る。ヒトやモノに憑いている、あるいは自然と集まってくる。それらにとって、よほど美味に映るらしい――龍神の花嫁。彼女は龍に嫁ぎ、神の末席にいるが、もとは人間である。
ひとり。花嫁が鳥居口で掃除をしているところを、悪霊というものが狙う。真黒な腕を伸ばし、食いたい欲しいと涎を垂らし、
「――誰の嫁に手を出そうっていうんです」
ぞわぞわと天地も怯えひるむ威厳の声。紅い炎が悪霊たちの腕に絡み、目をくりぬく。断末魔を上げさせることもない。
よごれた灰は、龍神がひとつ指をゆらすだけで、たちまち崩れ消え、
「朱夏? おはよう」
「おはようございます、弓弦。早いですね」
「貴方、とても気持ちよさそうに寝ていたから」
龍神は、花嫁に、それらを悟らせない。一応、と炎で手腕を清め、万全の状態で花嫁に抱きつく。『起こしてくれていいじゃないですか』、龍神の不満を理解した花嫁が、ごめんと緩やかに微笑んだ。
「お味噌汁、貴方の好きな感じで作るよ」
「では俺は貴女の大好きな卵焼きを作って差し上げます」
「ふふ。ご飯にしようか」
「はい」
龍神は花嫁をお姫様抱っこし、花嫁は慣れた様子で龍神に腕を回した。
「自分で歩けるけど」
そうつぶやく頬はほんのり赤く、龍神はご機嫌に笑う。
愛しい花嫁を護って、ふたりの幸せな朝ごはんが約束されていて。喜びを噛みしめる龍神は、今日もひたすらこのかわいい花嫁を溺愛しようと、彼女に頬ずりをしながら。
ひとり。花嫁が鳥居口で掃除をしているところを、悪霊というものが狙う。真黒な腕を伸ばし、食いたい欲しいと涎を垂らし、
「――誰の嫁に手を出そうっていうんです」
ぞわぞわと天地も怯えひるむ威厳の声。紅い炎が悪霊たちの腕に絡み、目をくりぬく。断末魔を上げさせることもない。
よごれた灰は、龍神がひとつ指をゆらすだけで、たちまち崩れ消え、
「朱夏? おはよう」
「おはようございます、弓弦。早いですね」
「貴方、とても気持ちよさそうに寝ていたから」
龍神は、花嫁に、それらを悟らせない。一応、と炎で手腕を清め、万全の状態で花嫁に抱きつく。『起こしてくれていいじゃないですか』、龍神の不満を理解した花嫁が、ごめんと緩やかに微笑んだ。
「お味噌汁、貴方の好きな感じで作るよ」
「では俺は貴女の大好きな卵焼きを作って差し上げます」
「ふふ。ご飯にしようか」
「はい」
龍神は花嫁をお姫様抱っこし、花嫁は慣れた様子で龍神に腕を回した。
「自分で歩けるけど」
そうつぶやく頬はほんのり赤く、龍神はご機嫌に笑う。
愛しい花嫁を護って、ふたりの幸せな朝ごはんが約束されていて。喜びを噛みしめる龍神は、今日もひたすらこのかわいい花嫁を溺愛しようと、彼女に頬ずりをしながら。