龍神さまと花嫁ちゃん(しゅかゆづ)

 私は神様を特別信じたりしないけれど、お気に入りの神社はある。目立つのを拒むように人目のつかない『みなづき神社』――ここへ来ると、なんだか落ち着く。
 みなづき珈琲店という御茶処があるのもいい。私は、参拝したり境内を散歩したりしたあと、その珈琲店でレモンティを飲む。自分へのご褒美には、いちごのショートケーキ。

 今日はよく晴れていて、けれど涼しい。良い天気だった。みなづき神社に足を運ぶ私は、木かげのベンチに人影を見つけて。ああ、あのふたりだ、なんて思う。
 赤い髪の男の人。ベージュの髪の女の人。彼らはいつも一緒にいる。箒で掃除をしているところも見るから、ここの神社の人たちなのだろう。
 いつも仲睦まじそうにしているが、今日も相変わらず肩を寄せあって、ベンチに座ってのんびりしている様子。男性が何かを話し、女性がちいさくふわふわ笑う。

(……あ)
 ふいに。女性がこちらを見て、その赤い瞳が美しかった。ぺこり、会釈をしてくれる。私も軽く会釈を返す。
 私は彼らと話すことはない。ただ、向こうも私を覚えてくれているようで、こうして、本当に軽くの挨拶はする。彼らのゆるふわな雰囲気がそうさせるのか、ただそれだけで、ふわりと心が癒される。
 よし、決めた――今日はいちごのショートケーキも食べよう。いわゆる自分へのご褒美的なものではないけど、歩いているし。実質、ゼロカロリーだから。


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