このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

龍神さまと花嫁ちゃん(しゅかゆづ)

 今日も眠れない夜で、すこし困ってしまっていた。正直、朱夏のおかげの末席でも神になれば寝なくてもいいのかな、なんて思っていた。実際はしっかり眠くなるし、寝なかったぶん体調も悪くなる。
 しかたがないからホットミルクでも飲んで落ち着こうと思った。そっとベッドから抜け出そうとしたら、案の定というか、予想はできてしまっていたけれど、朱夏の腕にぎゅむっとされて。

「弓弦」

 拗ねた声だ。そのまま、ひょいと抱き上げられてしまう。だから僕は、朱夏と一緒にベッドから下り、キッチンへと連れてゆかれる。
 その途中、

「俺に頼ってくださいよ。貴女はもっと俺に甘えるべきです」

 と、お叱りをうけてしまったので、

「甘えているよ。貴方が起きてくれるとわかっていて、わざと声をかけなかった」

 僕のこのとても面倒くさく、我ながらずるい心のうちを打ち明けた。こんなに甘えているんだよと伝えたかったのだけど、ちょっと、違うような。変なことを言ったかも、と後悔する。
 朱夏が僕を覗き込んできて、暗闇でも煌めく金の瞳にどきりと緊張した、直後。

「それならよかった。嬉しいです」
「……うれしいの?」
「はい、もちろん。そうか、ちゃんと甘えてくれたんですね。ありがとうございます」
「……うん」

 ふわあと色鮮やかな花が満開になる、そんな様子で、朱夏は笑った。朱夏は僕の額にキスをし、とってもご機嫌に鼻歌まで。
 そこまで喜んでくれると、黙ってひとりで作るつもりだったのがとても申し訳なく思う。次は素直に朱夏を起こそう。決意しているうちに、キッチンの椅子に下ろされた。
 朱夏が作ってくれたはちみつ入りホットミルクをふたりで飲んで、リラックスできた。このふわふわな気分のまま、今度こそ寝つけるといいなって、朱夏とのんびり話をする。


14/23ページ
スキ