しゅかゆづ!

 最近、激しい気温差のせいか体調を崩しがちで、毎日のように朱夏に心配をかけてしまっている。
 どうも食欲がない。プリンとかお粥とか、朱夏が作ってくれるから食べている。そのたび、もしも朱夏がいなかったら、僕は死ぬまで何も食べていないんじゃないかと思う。
 それは言いすぎ? それに、どれだけ飢えても死ぬことだけはない。僕はそういうヒトもどきで、だけど、そもそも朱夏に出会っていなければ、こうにはならなかったわけで。

「ん……?」
「弓弦、今日のお昼はうどんです。ちょい冷で美味しいですよ」
「ちょいつめ」

 たぶんいらないことを迷路みたいに考えていたら、朱夏がきた。ちょいつめうどん。カタンとテーブルが鳴る。よいしょ、なんてベッドから起き上がる僕。

「朱夏。ごめんね」
「いいえ、大丈夫です。ですが、もうひとつの方が嬉しいので、ぜひ言ってください」
「もうひとつ……あ、ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」

 迷惑をかけている。でも、朱夏は『迷惑だなんてとんでもない』と言ってくれる。みなづき珈琲店もチマに任せきりで、チマもお客さまも迷惑してるだろうに、お見舞いの言葉や品物をくれる。
 常連魔女のレターさんがくれた薬瓶は、ちょっと怪しかったけれど。添えのメモには『良くなる薬』と書かれていた。すぐ朱夏に取り上げられ、『あれとは今度話をつけてきますから』……そういうときだけ朱夏は、龍神らしく恐い。あの中身は結局なんだったのだろう。レターさん、だかな。
 ……え、あ、朱夏待って、

「弓弦、あーん」
「うどんであーんはだいぶ厳しい」

 待って、自分で食べられるから。ありがとう、気持ちは嬉しい。
 ちょっと残念そうにしゅんとしてしまう朱夏の赤い髪をよしよしと撫でて。ちょいつめうどん、いただきます。


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