「ねむい、寝るのやだ、ねかしつけ禁止」
「なぜそんなに頑ななんです」

　今日も夜。弓弦はとても眠そうなふわふわ声、うとうとな顔で、いつもみたいに変な意地を張って。怖い夢を見ても大丈夫ですよ、俺が助けてあげますから。そう言っても、寝たくないの一点張り。
　いつものことですし、かわいいかわいい弓弦なのでいいのですが、ひとつだけ不満があります。それは、弓弦が抱きしめているぬいぐるみ。大きめなうさぎのぬいぐるみをむぎゅむぎゅ抱きしめているのが、こう、モヤっとします。

「俺に抱きついてください」
「……や。だって、朱夏に抱きつくと」
「はい」
「きもちくて、眠くなっちゃ……あっ」

　ベッドの隅の弓弦からぬいぐるみを取り上げて。
　ほら、ぎゅむ。おもいきり抱きしめてくれていいですよ。