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しゅかゆづ!

「本、面白いですか?」

 朱夏は、にこやかに訊ねた。自らの膝の上。腕の中。小説を読んでいた弓弦が振り向き、その赤い瞳で朱夏を見上げる。

「ん?」
「いま貴女、笑っていました」
「ああ。うん」

 唐突に訊ねられぽかんとしたらしいが、すぐに納得したようで頷く。そうして弓弦が笑みを浮かべると、朱夏の表情もなおさら綻んだ。
 けれど。

「妬けます」
「え?」
「俺が貴女を笑わせたいのに。本ごときに負けてしまうなどと」
「え、いや、勝ち負けじゃな……」
「弓弦」

 彼女の持つ本。ページに素早く栞をはさみ、ぱたんと閉じてしまう。きっと弓弦も集中を切らしてしまっただろう。ちょうど。朱夏は都合よく理由をつけ、弓弦から本を離してしまい、

「俺の相手もしてください」

 弓弦を抱きしめて甘えると、腕の中から呆れ半分の笑い声がした。

「しかたない龍だなあ」

 くすくす。美しい鈴が清らかな風に揺られるような、音。


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