しゅかゆづ!

 また、へんな悪夢を見て、けれどそれは明らかに、最近読んだホラー小説の影響だった。だから起きたあとの暗やみに怖がる必要はない。ゆっくり起き上がることができた。
 キッチンで水を飲み、寝室に戻って。本当に普通にホラーなだけの夢だったなあと思いつつ、ベッドに潜り込む。
 きらり、金色の瞳が煌めいて、僕のことを待っていた。

「朱夏。起こした?」
「ええ。それより弓弦、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。寝る前まで本読んでたから、そのせい」
「本――ああ、あのホラー小説。貴女、映画だとめちゃくちゃびっくりしてましたよね」
「む」

 くすくす。笑う朱夏の、どこか安心した様子。ああ、僕のことを心配してくれていたんだ、この龍は。少しからかわれている気がするけれど、まあ、ありがとう。
 朱夏の腕にもぞもぞっと入り込んで、ほっと息をつく。あれ、僕。もしかしたら、自分で思うより怖がっていたのかも。

「よしよし、弓弦、俺がいますからね。おばけもなんでもイチコロです」
「一殺……」

 そうだね、貴方、龍神様だもんね。頼もしいな。


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