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しゅかゆづ!

 母の日近し。というわけで、チマが折り紙をしているところに、

「サボって何やっているんですか」
「サボってなんかいませんよお〜」

 朱夏龍様がいらしたので、だってほら、いまお客様いないでしょう? なんて見回す穏やかなみなづき珈琲店の店内です。
 心なしせいせいしたかのような、店主あるまじき朱夏龍様。チマの折り紙が少し気になるご様子。

「弓弦さんにと思いまして、作っているんですよお」
「……弓弦に?」
「はい〜、母の日ですから!」

 折り紙おりがみ、花になあれ。お手紙になあれ。お世話になっている弓弦さんの顔を思い浮かべながら、ひとおりひとおり丁寧に。

「それ、俺にもやらせてください。どうすればいいんです?」
「あらあら〜もちろんですよ〜!」

 さすが、誰より何より弓弦さんを愛する朱夏龍様。チマは嬉しくなってですね、お向かいに座る朱夏龍様に、たくさんの折り紙をお教えしたわけです。
 母の日ですから。それに、

「弓弦さん、早くよくなるといいですねえ」
「ええ。よくなります」

 カウンター横の弓弦さん特等席はからっぽ。ここ最近の激しい気温差に、弓弦さんはすっかりダウンしてしまって。朱夏龍様もほんとうは一瞬一秒、弓弦さんから離れたくないのでしょうねえ。
 今日も、ぼちぼち閉店がいいでしょう。

 ◆

「朱夏、おかえり」
「弓弦、体調は大丈夫ですか?」
「うん。ぼちぼち」

 珈琲店から帰ってきた朱夏をベッドでお迎えする。本当は玄関まで行ってあげたかったのに、申し訳ないな。

「弓弦これ」
「うん?」
「俺の想いがたくさん込められています。ですが一応、俺と龍もどきから……でも俺の方が強いですし貴女を想っています」
「? うん」

 自己主張の強い朱夏にはすっかり慣れっこで、なんだろう。かわいらしいピンクの箱。わあ、箱も、装飾のお花も、ぜんぶ折り紙みたい。箱の中も。
 お花、鶴、手紙。いろんな形の、いろとりどりの折り紙。こっちの龍なんてとても精密で。……えっ、龍?

「弓弦、いつもありがとうございます」
「え、ううん、こちらこそ」
「早くよくなってください。おかゆ、作りますからね」
「うん」
「貴女を想って折りました。愛しています、弓弦」
「うん……すごい。ありがとう」

 たぶんこの繊細な薔薇はチマが作ってくれたものだろう。お手紙の封筒も折り紙で、これもたぶんチマ。
 それでこっち。手のひらサイズなのにリアルな赤い龍。これ、朱夏、貴方が作ったんでしょう? でも折り紙でここまで作れるのかなってレベルで、まあ、さすが龍神さま。

「嬉しいよ。チマにもお礼を言わないとね」
「俺だけでいいです」
「またそんなこと言って」

 はいはい、よしよし。本当にありがとう。この龍をベッドサイドに飾っておいたら、具合悪いのとか飛んでいきそう。でもそのうち朱夏が、『弓弦の龍は俺だけでいいです』とか言ってやきもちしそうな気もする。僕は彼のお嫁さんだから、彼には一番詳しいんだ。


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