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みなづき珈琲(仮)

 大きく大きく泣きじゃくるような空がぴたりと涙をとめ、おそらく何か希望を得てきらきらと晴れ渡った。そうすると世界は途端に春の陽気で、風は軽やかに水たまりと躍る。
「あちらもこちらも、空が泣きやんで喜んでいるみたいだ」
 お気に入りの席。窓から外を眺める。僕のぽつんとした呟きに、向かいの朱夏は笑った。
「俺だって、貴女が泣きやんでくれたら嬉しいものですよ」
「僕?」
「ええ。あ、弓弦、おかわりどうです?」
「いただこうかな」
 はい、と朱夏はご機嫌だ。からのカップに紅茶を注いでくれる。猫舌な僕のための、飲みやすい温度の紅茶。ひとくち飲んで、朱夏と目を合わせ、お互いわけもなく微笑んで。
 それにしても晴れたなあ。今朝は、ひどい大雨だったのに。あたたかい陽射し、桜もそろそろ咲くだろうか。


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