みなづき珈琲(仮)
最近すっかりお気に入りの『みなづき珈琲店』へ行くと、期間限定のメニューがあった。
『桜あんかけもちもちパイ』というデザート。好奇心から頼んでみる。しばらく待っていると、ちいさな龍の店員『チマ』が、
「おまたせいたしました〜! どおぞどおぞ、ごゆっくり!」
テーブルにコトンと置かれた『桜あんかけもちもちパイ』。桜あんが、もちの入ったパイに、いい感じにかかっている。なるほど、確かにあんかけ。
わたしは、好みのレモンティをひとくち飲み、そしてフォークを取った。桜あんかけもちもちパイ。いただきます、と手を合わせて。
◆
いつもショートケーキとレモンティのセットを注文してくれるお客さまが、今日は新メニューに挑戦してくれた。
彼女がふわりと頬を綻ばせてくれるから、僕も嬉しい。朱夏の作るデザートが、今日も誰かを笑顔にしている。チマの明るい接客も。
「弓弦、どうしました?」
「ん? ううん」
新メニューの桜あんかけもちもちパイは、朱夏が僕に作ってくれたもの。たまには新メニューにしてみない? と提案したのは僕。
あのふわりと桜味に甘くてパイの中がもちもちしていて、とても美味しいデザートを作るたび、朱夏は『本来弓弦のためなのに』とむっすりするから。そこには触れずに、
「今日は体調がいいから。お店のお手伝いできるの、嬉しいんだよ」
「そうですか。でも、無理しないでくださいね。疲れたらすぐ休んでほしいです」
「うん」
心配してくれる朱夏。頬へのキスがくすぐったくて、あったかくて、すき。
……あ。しまった、いまはチマもいるしお客さまもいるんだった。はっと朱夏から離れたけれど、たぶん遅い。だって、あそこの白秋さんはげんなりしているし、だぁくさんはにこにこ微笑んでいる。
チマなんて、もう、きらっきらで。
「ゆ、ゆづる……? 俺のキス、いやでした? そんなにいやでした……?」
「え!? いや違っ、違う! 待って朱夏、ちが……」
僕が身を離してしまったことで、誤解させてしまったらしく。がく然とする朱夏を放っておけずに、ああもう、結局もういちど僕からキス。嫌いなわけないだろう。
『桜あんかけもちもちパイ』というデザート。好奇心から頼んでみる。しばらく待っていると、ちいさな龍の店員『チマ』が、
「おまたせいたしました〜! どおぞどおぞ、ごゆっくり!」
テーブルにコトンと置かれた『桜あんかけもちもちパイ』。桜あんが、もちの入ったパイに、いい感じにかかっている。なるほど、確かにあんかけ。
わたしは、好みのレモンティをひとくち飲み、そしてフォークを取った。桜あんかけもちもちパイ。いただきます、と手を合わせて。
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いつもショートケーキとレモンティのセットを注文してくれるお客さまが、今日は新メニューに挑戦してくれた。
彼女がふわりと頬を綻ばせてくれるから、僕も嬉しい。朱夏の作るデザートが、今日も誰かを笑顔にしている。チマの明るい接客も。
「弓弦、どうしました?」
「ん? ううん」
新メニューの桜あんかけもちもちパイは、朱夏が僕に作ってくれたもの。たまには新メニューにしてみない? と提案したのは僕。
あのふわりと桜味に甘くてパイの中がもちもちしていて、とても美味しいデザートを作るたび、朱夏は『本来弓弦のためなのに』とむっすりするから。そこには触れずに、
「今日は体調がいいから。お店のお手伝いできるの、嬉しいんだよ」
「そうですか。でも、無理しないでくださいね。疲れたらすぐ休んでほしいです」
「うん」
心配してくれる朱夏。頬へのキスがくすぐったくて、あったかくて、すき。
……あ。しまった、いまはチマもいるしお客さまもいるんだった。はっと朱夏から離れたけれど、たぶん遅い。だって、あそこの白秋さんはげんなりしているし、だぁくさんはにこにこ微笑んでいる。
チマなんて、もう、きらっきらで。
「ゆ、ゆづる……? 俺のキス、いやでした? そんなにいやでした……?」
「え!? いや違っ、違う! 待って朱夏、ちが……」
僕が身を離してしまったことで、誤解させてしまったらしく。がく然とする朱夏を放っておけずに、ああもう、結局もういちど僕からキス。嫌いなわけないだろう。