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みなづき珈琲(仮)

 そっと朝がやって来て、みなづき夫婦が眠る寝室の窓をノックした。こんこんこん、ちょっといいかい。わたしはのどが乾いているのだけど。

「いいわけないでしょう。見てわかりませんか」

 もそりと起きた朱夏の髪は寝癖にぴょこぴょこ。けれど、ぞっとするような鋭い目つきで、朝をぎろりと威圧した。
 静かに眠る弓弦を腕に抱きしめ、朝にしか聴こえない声ならぬ声。朱夏龍は、愛する弓弦の他には残酷だ。神らしく、平等に。
 ふんっと鼻を鳴らして嗤う。

「俺は弓弦と寝ていたいので、まだ来なくて結構です」

 そして、窓から朝を引き剥がしてしまった。
 カーテンがシャッと閉ざされ、朝は独り取り残される。
 朝はひとつ息をした。やれ、朱夏龍は相変わらず。わたしや世界に冷たいこと。
 花嫁を護るように抱きしめる腕は壊れものを扱うように優しく、愛情に満ちていじらしいこと。
 ふむうむよいよい、潤った。今日も世界を照らして起こそう。
 このみなづき朱夏と弓弦のふたり。みなづきの溺愛のような光がよい。


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