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みなづき珈琲(仮)

 まっくろ雨ぐもは、とても泣き虫。
 泣きやんで、空は晴れて、雲仕事おやすみの間も、ちょっとぐすぐす。花粉症にも悩まされぎみ。

 そんな雨ぐもがちょくちょく訪れる『みなづき珈琲店』。接客がメインらしい龍神見習いの小さな龍、『チマ』の今日のオススメは、マカロンらしい。なので、雨ぐもはマカロンとレモンソーダを注文した。
 小皿に可愛らしく盛り付けられたマカロンは二つ。片方は白色、片方は水色。それを見て、また涙ぐむわけは、恋しいから。晴れの白雲、水色の空。雨ぐもにとっての、優しい兄姉。窓から見上げるだけじゃなく、会って、他愛のない話でもしたくって。

「弓弦、どうですか? 俺のマカロン。貴女のためだけのさくら味ですよ」
「美味しいよ。美味しいけれど、朱夏、そんな大声で……」
「大丈夫。誰も気にしません」

 みなづき珈琲店の、みなづき夫妻。店内の奥、カウンターの近くの隅の席で、相変わらず仲良しそうだ。
 雨ぐもは、レモンソーダを飲みながら、ぼんやりとふたりを見た。赤い髪に麗しい顔立ちの朱夏龍、亜麻色の髪をゆるふわと編んだ可愛らしい弓弦。ふたりを見ていると、なぜなのか、ちょっとだけ恋しいさみしいが紛れる。ついでに花粉反応も落ち着く。
 だから雨ぐもは、このみなづき珈琲店が好きだ。マカロンもレモンソーダも美味しかった。甘酸っぱく満たされているあいだは、涙もぴたりと止まっている。


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