溺愛しゅかゆづ夫婦 12

 朝、起きたら、ずきずきと喉が痛くて。やらかしたなあと額に手をあてた。……熱い。
「弓弦、寝ていてください。無理しちゃ駄目ですよ」
 風邪を引いてしまった。朱夏に心配をかけて、申し訳ない。朝ごはん作ってあげたかったのに、風邪を移してしまってもいけないし……。
「少しだけ起き上がれますか? はちみついりのホットミルクです」
「ん……」
 朱夏はどこまでも優しい。ただ起き上がるだけにも、手を添えて支えてくれる。いい子、と頭を撫でてくれる。ちょっと子ども扱い? ……でも、その手のひらが心地いいのは、事実だ。悔しいくらいに。
「あまい」
 喉の痛みに絡みつき、絆していくはちみつ。体にも心にも染み渡ってゆくホットミルクと、朱夏の慈愛。
 朱夏は、ゆっくり微笑んでくれる。僕は、ほっと息をつく。
 早く治してしまいたいから、大人しく休んでいよう。朱夏の手のひらに甘えて。


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