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溺愛しゅかゆづ夫婦 11

 土曜日。弓弦は朝早くにベッドを抜け出す。朱夏が休みの日だというのに、お弁当を用意した。
 いつもと違うのは、お弁当がふたりぶんであるということ。
 お昼でも、昼過ぎでも、温めて食べられる。これはテレビか何かで見たおうちご飯なのだが、弓弦にとっては斬新だった。

 どうせ自分たちは最大限にごろごろし、何度も眠り、なかなかベッドから起きないのだ。
 だから、お腹がすいたらすぐに食べられるように、こういうものを用意してもいいんじゃないかと、弓弦は思った。

 おおよそふたりぶんできあがり、箱にご飯をつめていると、ふらりと現れた影が弓弦の背中を捕らえた。
「う……ゆづる」
 だいぶ寝ぼけた朱夏である。
「どこいってたんです、俺、貴女がいなくてびっくりして……」
「ごめん、朱夏。すぐ戻るつもりだったから」
 ふわふわぽやぽやと小言。ぎゅむぎゅむ甘える腕。弓弦は、そっと目を細め、朱夏のぼさぼさできれいな赤い髪を撫でた。

「よし、おわり。朱夏、戻ろう?」
「んん……ふあい」
 しっかり布に包んだ弁当箱、ふたりぶん。
 弓弦はそれをリビングのテーブルに置いた。
 うとうとしている朱夏は、待っていましたとばかりに弓弦をお姫様抱っこして、寝室へと戻る。
 ベッドに入ったふたりが空腹になって一緒に起きてくる時を、ふたりぶんの弁当が、まどろみながら待っている。


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