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溺愛しゅかゆづ夫婦 11

 歳の数だけ豆を食べる。
「ねえ、朱夏っていくつ食べるの?」
「さあ……どうでしょうね」
 永く生きている龍神は、こてんと首を傾げた。
 豆をひとつ口にし、弓弦に口づける。
 とてもほんのりしょっぱいのは豆の味。その後の甘さは弓弦とのキスが愛しく幸せな故。
「いくつかはわかりませんが、これならいくつでも食べられます」
「……ばか」



 俺も一応龍神なわけで、俗世の……ようは人間の、欲にまみれた発想をなぞるのもいかがなものかと、まあプライドらしきものはあるわけですが。
「……、……」
 大きな恵方巻きを小さな口で一生懸命食べている弓弦の、その横顔。少食な彼女が頑張って、悩ましげに眉をひそめながら、黒く太いものを頬張っているわけです。
「…………」
 愛しいひとのそんな姿を見たら、龍神の俺といえど、欲が湧きますね。むらむらと。仕方ないことなので、弓弦、食べ終わったらよろしくお願いします。

「弓弦、無理して食べなくていいんですよ」
「…………」
「ほらあとは俺が食べますから。……弓弦?」
 小さなお子さんにもオススメ! と書かれていた恵方巻きは、あと半分ほど。
 弓弦は、むむむっとした顔で、ちいさく首を振って。頑張るのも、食べるのも偉くて嬉しいんですが、心配にもなってしまいます。


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