このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

溺愛しゅかゆづ夫婦 11

 朱夏がお仕事に行っていて、ひとりきりの家。
 軽くお掃除をしていたら、朱夏のボールペンが目に入った。
 なんてことはない。テーブルの上のちいさめな収納ボックスに、ちょこんと立てかけられている。きっとそのボールペンの居場所はいつもここで、朱夏が使っては、きちんとここに戻しているのだろう。
(……前に、僕が贈ったやつ)
 シンプルな紺色のボールペン。何の変哲もない、それだけの。それでも朱夏はとても嬉しそうに受け取ってくれて、今でも大切に使ってくれている。……そして、
(リボン……)
 ついこの間、バレンタインのとき。僕にできるたくさんのことを朱夏にしてあげたくて、僕なりに頑張った。お菓子の入った小袋も贈った。……紺色のボールペンに、きゅっと結ばれているいちご柄のリボン。それはもともと、お菓子の小袋を結んでいたものだ。
 ただ、それだけ。目について、気づいて……胸のなかが、ふわふわと暖かくなって。
(朱夏。はやく会いたい)
 毎日この家で一緒なのに。結婚して、もう、何年と経つのに。いまなお朱夏が仕事中のこの時間はちょっとさみしく、その上こんな幸せを見つけてしまったら、恋しくてしょうがない。
 今日も、夕方には帰ってきてくれるかな。……お昼休みに電話くれるかな。はやく会いたいし、声が聞きたい。この胸のなかの暖かいどきどきが、『朱夏が好き』と繰り返し唄っている。


17/30ページ
スキ