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溺愛しゅかゆづ夫婦 11

 日付けが変わって、バレンタイン当日になった。
 この深夜、そろそろ寝ようと言う朱夏。あたふた止める、ちょっと待って。
「あのね朱夏、お昼も、貴方へのバレンタイン……用意するのだけど。でも」
 今日はもうバレンタインだから、まっさきに伝えたい気持ちがある。だから僕は、ひとくちのチョコレートをくちにした。
「弓弦……ん」
 背伸びして。いつもの癖で屈んでくれる朱夏のくちびるへ、くちづけて。甘いチョコレートを分けあったあと、とろける吐息が重なりあった。
「いつもありがとう、朱夏。だいすき、……ぁ、あいして、る」
「……弓弦」
「さ、さあ、寝よ……わあっ」
 はずかしくて、でも、やりきった。ちゃんと伝えられた。
 あとは寝てまた今日のお昼から、手作りのパンケーキをとこっそり思っているところに、朱夏の両腕。
 ぎゅむっと抱きしめられる。どきどき、僕も朱夏も鼓動が速い。
「愛しています。食べちゃっていいですか?」
「僕も……え?」
「貴女を。いいですよね、ねえ弓弦」
 あっという間に寝室のベッド。そっと下ろされ、朱夏の影が降る。
 ……寝るんじゃなかったの。まったく、もう。



 バレンタインの朝に、甘い香りがした。
 弓弦が作ってくれた、チョコレートクリームの塗られた食パンをかじる。
 ほかにも愛情たっぷりの朝ごはんを食べ、
「行ってきます、弓弦」
「うん。朱夏」
 玄関先、見送ってくれる弓弦の可愛らしい背伸びと、甘くふわふわしたほんのりなキス。
「すき。……行ってらっしゃい」
「……あはは」
 顔を真っ赤にして、なんて愛おしいひとだろう。
 嬉しくて嬉しくてたまらない。弓弦を抱きしめて、もう離したくない。いっそこのまま龍に戻ってどこか遠くへ連れ去ってしまおうか。
「朱夏、こら、遅れちゃうよ」
「愛してます」
「……遅れても知らないから」
 言いつつ抱きしめ返してくれる弓弦。
 ああ本当に、このひとと逢えて毎日が幸せでいっぱいだ。



さんざんに迷って決めたバレンタイン
チョコパンケーキをここで焦がして
だいぶ立ち直れない感じの僕の横で
「あっ、このプチケーキ、ハート型なんですね! あはは、弓弦、本当に貴女って愛おしいです。ありがとうございます」
朱夏は心底うれしそうに……なんだか珍しくはしゃいでいて
嫌味ったらしさのかけらもない笑顔
落ち込む僕をフォローすることも忘れてきらきら輝く瞳
こんなに焦がしてしまったのに、本心から喜んでくれている
「弓弦!? どっどうしました!?」
「ううん……」
あふれる涙をあわてて拭ってくれる朱夏の手に頬を寄せた
嬉しいんだよ、と笑って答えた


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