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溺愛しゅかゆづ夫婦 10


逆ばにいの日 はずかしいけど朱夏のため
思い切ったはいいけれど
どこもかしこもぺたんな僕の身体では
なんか違う……ような気がして……むう……。



「朱夏っ、あああのね、ぼ、僕」
「弓弦? どうしたんです、バスタオルなんて着……」

 一月二十八日、日曜日。
 とてとてリビングから居なくなったと思いきや、すっぽりバスタオルをかぶって、とてとて戻ってきた弓弦が――それを一気にばっと脱いでみせた。朱夏は凍りついた。
 バニー姿である。いわゆる、『逆』の。弓弦は湯だったタコより真っ赤っかな顔で、ぷるぷる震え、恥じらいとか寒さとか様々なものに耐えている。その様子がまた、朱夏をひどく煽るのだった。

「…………」
「えとっ……あ、あれ、しゅか?」
「…………」

 愛おしい妻の愛くるしい姿にそそられないはずがないけれども。朱夏はとりあえずバスタオルで弓弦を包みなおし、冷えてはいけないからとブランケットやらのモコモコセットをかぶせ、ふわりと優しい笑みを浮かべてみせては、

「……とっても似合っていて、素敵ですよ。ですから弓弦、今夜の楽しみにさせてください」
「こ、こんや」
「はい。ほら、ひとまず。あったかいパジャマに着替えてきて、ああ、映画でも見ましょうか。この前、貴女が見たいと言っていたやつです」
「あ……。うん、待ってて」
「ええ、慌てなくていいですからね」

 巧みに弓弦を寝室へ向かわせる、彼女の姿が完璧に見えなくなったところで、朱夏は深々ため息をついた。
 どさっとソファにもたれ込む。「危なかった……」とひとりつぶやく疲労のさまは、弓弦というたったひとりを絶対に大切にしたい、龍神の強い意思と理性である。

「誰か弓弦に逆バニーを焚きつけましたね……殺す」

 いやとっても可愛らしくとって喰いたい格好でよろしかったわけだが、そういうものに疎い弓弦で、衣装だって買ったりしないはずだ。弓弦にそんなことを教え込み衣装の用意までしたやつがいる。許し難い。おそらく、弓弦の行きつけの本屋の女店主であろう――あれはいたずらが過ぎる。
 いっぺん殺す、と不穏なことが口をつく前に、弓弦が戻ってきた。朱夏はすぐさま姿勢を正し、やわらかい頬笑みを浮かべ、いちご柄のパジャマを着た弓弦を、むぎゅうと抱きしめるのだった。


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