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溺愛しゅかゆづ夫婦 10


 ほら弓弦暖かくして、と毛布にくるまりつつ弓弦を抱きすくめる。俺の腕にすっぽりおさまる彼女は、ふわふわ微笑みながら言った。
「貴方の体温がいちばん好き」



 朱夏とのお揃いで幸せな初夢見て起きる朝はご機嫌でいっぱいだ

 愛しい初夢を見て俺も弓弦もご機嫌で餅すらぷっくりやきもちですよ

 寝正月どんなに微睡み貪ってもまだまだ足りない弓弦との時間

 かっこいい朱夏の腕が僕を抱きあげる
 彼の首に腕をまわして連れていってと応えて甘えて

 弓弦をそっとベッドに下ろし真っ赤な頬にキスを
 可愛らしい貴女に今日も惹かれて夢中でたまらない



 お参りに行った神社の神さまは朱夏の父母さまであるらしいから
 僕にとっての義父義母さまになるのかななんて、いつも、実感はなくて申し訳ないけれど。
 お賽銭、鐘を鳴らし、頭を下げ、手を合わせて願うのはもちろん
(今年も朱夏が健康でありますように。この幸せな日々を、彼と変わらず過ごせますように――)
 ふわり。優しい梅の香りが僕の頬を撫でた気がした。

 ◆

 梅の香りがする。俺の、一応の父母っぽいもの、それっぽいだけのなにか。あれらは弓弦を気に入っているので、俺としてはむかむかします。
 祈る姿も美しい彼女は俺だけの花嫁で、俺だけの弓弦。それは相手が何ものであろうと、変わりゃしないんです。
 そもそも御参りだっていらなくないですか、だって俺が龍神ですし。弓弦は俺になんでも祈ってくれればいいのに、でも、『でも初詣も大事だから』って、弓弦は真面目で律儀で愛しい。はい、弓弦がそう言ってたのでやっぱり正しいです。
「……朱夏? どうしたの」
「いいえ」
 祈り終えたらしい弓弦をその場でぎゅっと抱きしめる。「わっこら朱夏、ほかの人が」大丈夫、いま誰もいませんから。
 あの奥でこちらをにこにこ見ている一応の父母神どもに、俺たちがいかに幸せでらぶらぶか見せつけてやりましょう。


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