溺愛しゅかゆづ夫婦 10
雪が降っている。その夢を見ている。
どこか、座り込む僕の頭上から、ひらひらと舞って降りてくる。
手をかざしてみる。手のひらに落ちた雪は思うより大きく、ふわっと暖かい。
なので、どうやらそれは雪ではない。
空を見上げる。どんなに手を伸ばしても決して届かない高いところに、ひゅるりと延びる影を見た。
力強くうねる長い胴体。きらきら煌めく赤い鱗。尾のほうがひとつ凪ぐと、ぱっと光の粒が跳ねて、ひらりひらり舞い落ちる。
それが雪だと思ったものの正体だった。
「……朱夏――」
気高く赤い龍。僕はその名前を呼ぶ。しばしその名をなぞるように、想いを綴るように。
応えるように泳路を変え、僕のもとにやってくる龍。雪のような光のかけらを伴って、まとう風が通り過ぎるのも暖かく、だいぶ早い春を思った。
「すごい……朱夏、かっこいいね」
僕の目の前。降り立った龍の頬を撫でる。
彼ほど美しく尊大な龍が、こんな僕の手を許してくれる。
そのことが、とても嬉しい。
「ふふ、なあに、くすぐったいよ」
すりすり頬ずりしてくる龍が、ひどく愛おしくて。
僕と朱夏の上に、春のかけらが舞い踊る。
――夢を見て目を覚ますと、寝ぼけた視界に、朱夏の微笑みが映りこんだ。
艶やかできれいな赤い髪。煌々とした琥珀の瞳。かっこいい龍の神さまは、ヒトの姿までかっこいい。
「弓弦」
なんだか嬉しそうに僕を呼ぶ。甘くやわらかい声色。僕の頬に触れながら、花開くように綻ぶ笑顔。
彼の手のひらにするりと甘え、ぽつりとこぼしたひと言に、さまざまな感情が織り交ざった。
「ずるい」
どこか、座り込む僕の頭上から、ひらひらと舞って降りてくる。
手をかざしてみる。手のひらに落ちた雪は思うより大きく、ふわっと暖かい。
なので、どうやらそれは雪ではない。
空を見上げる。どんなに手を伸ばしても決して届かない高いところに、ひゅるりと延びる影を見た。
力強くうねる長い胴体。きらきら煌めく赤い鱗。尾のほうがひとつ凪ぐと、ぱっと光の粒が跳ねて、ひらりひらり舞い落ちる。
それが雪だと思ったものの正体だった。
「……朱夏――」
気高く赤い龍。僕はその名前を呼ぶ。しばしその名をなぞるように、想いを綴るように。
応えるように泳路を変え、僕のもとにやってくる龍。雪のような光のかけらを伴って、まとう風が通り過ぎるのも暖かく、だいぶ早い春を思った。
「すごい……朱夏、かっこいいね」
僕の目の前。降り立った龍の頬を撫でる。
彼ほど美しく尊大な龍が、こんな僕の手を許してくれる。
そのことが、とても嬉しい。
「ふふ、なあに、くすぐったいよ」
すりすり頬ずりしてくる龍が、ひどく愛おしくて。
僕と朱夏の上に、春のかけらが舞い踊る。
――夢を見て目を覚ますと、寝ぼけた視界に、朱夏の微笑みが映りこんだ。
艶やかできれいな赤い髪。煌々とした琥珀の瞳。かっこいい龍の神さまは、ヒトの姿までかっこいい。
「弓弦」
なんだか嬉しそうに僕を呼ぶ。甘くやわらかい声色。僕の頬に触れながら、花開くように綻ぶ笑顔。
彼の手のひらにするりと甘え、ぽつりとこぼしたひと言に、さまざまな感情が織り交ざった。
「ずるい」