溺愛しゅかゆづ夫婦 9
年末も年始も知らぬ星のように
ぬくい
今日で今年も終わりなんだなあと、ただぼんやりと考える僕は、その実感があまりない。
年末年始だからなにというわけでもない。少しのさみしさは、月終わり月始まりと同じような感覚だ。
「弓弦」
「なあに、朱夏」
「ぽかぽかで気持ちいいです。貴女は?」
「ん、僕も」
時間も世界も気にせず、ベッドの中、朱夏とだらだらごろごろ。くっついて、よりそって、キスをして。いつもの休日とほぼ変わらない過ごし方。
幸せだ。朱夏も、そう思ってくれていると嬉しいな。
三十一日の朝。
ふんわり目を覚ました弓弦の髪を撫で、額にキスをして。
「今年もありがとうございます。弓弦、貴女がいてくださるおかげで、俺は幸せです」
「……ちょっと早くない?」
「何回言っても言い足りないので、早めに」
「ふふ、そう」
まだ少し眠そうな弓弦が、くすりと笑い、俺の腕の中にもぐった。
胸もとに埋める顔。細い腕が俺を抱きしめて、
「こちらこそ。朱夏。来年もよろしくね」
「あはは、はい」
ぎゅっと抱きしめ合う。
今年最後のこの日、俺と弓弦はだらだらごろごろ。買い物も済ませてありますし、行きたいところもないですし。
いいえ、俺は弓弦が行きたいと言えば何処へでも。だけれど、彼女は騒がしいのが苦手で、『朱夏とゆっくりしたい』と言ってくれたので。
可愛いでしょう、俺の花嫁。俺だけの弓弦です。
「朱夏、おなかすかない?」
「俺は大丈夫ですが、貴女はどうですか?」
「僕も大丈夫」
では、引き続き。のんびりごろごろ、くっついて寝ころんで。
夜ごはん 今年最後も オムライス
朱夏がチキンライスと薄焼き卵を焼く。
きれいなかたちのオムライスに、僕がケチャップをかける。
年末関係なく、朱夏がお休みの日によく作ってくれるこのオムライスが、今年の最後の夜ごはん。
「ふふ、弓弦、かわいいハートですねえ」
「貴方への愛情たっぷり込めたから、……こ、こもってる、から」
本心。じわじわ恥ずかしくなって、なぜか二回言った。朱夏が嬉しそうに笑う。僕も、熱い頬がふんわり綻ぶ。