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溺愛しゅかゆづ夫婦 9

 世界の龍図鑑。分厚い本に没頭していた。
 さまざまな龍とその逸話。とても面白い。
 読めば読むほど、朱夏のことを知れる気がして。

「弓弦、ゆづる」
「……ん」

 朱夏は、寂しいですと言わんばかりに、ちょんちょん頬をつついてくる。
 彼の赤い髪をよしよしと撫でつつ、弓弦は読書を続けた。


(……もういっそ龍の姿になって、巻きついてやりましょうか)

 いよいよしびれがきれて構ってほしい朱夏は、それなのに、片手間に頭を撫でられるだけでは不満だった。
 不満なのに、心地良い。弓弦の手を払うだなんてとんでもない。寂しくはあるが、本に夢中な弓弦も愛おしい。
 ……けれどさすがに俺を放置しすぎでは。やっぱり、もっと構ってほしいです。
 弓弦の手のひらに甘える朱夏の葛藤は続く。


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