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溺愛しゅかゆづ夫婦 8

 まだ眠くて、ぼんやりする。朝の四時。
 僕と一緒に起きた朱夏が、ホットミルクを作りに行っているあいだ、僕はベッドでうとうとしていた。
「弓弦」
「ん、……ん?」
 朱夏の気配。声。顔を上げる。唇に、そっと差し出されたもの。朱夏の指先がきれいで、見とれて、あまり考えずに、もぐっと。チョコレートの味がする。
「あはは。はい、朱夏龍特製ホットミルクですよ。起き上がれますか?」
「ん」
 もぐもぐ。食べながら、頷いた。これはたぶん、あれだ、細長いクッキーをチョコで包んだ、あのお菓子。
 そういえば、今日は、十一月の十一日?
「……いただきます」
「どうぞ。俺もいただきます」
 朱夏が渡してくれるマグカップ。サイドテーブルには、やっぱり、お菓子の箱。自分のぶんのホットミルクを飲んだ朱夏が、ひとつ、そのお菓子を食べる。
 ただそれだけが、とっても絵になる。今日も相変わらず、格好いい龍。

 のんびりとした時間が流れていく。
 僕は朱夏に見とれてばかり。朱夏は、僕を見て微笑んでばっかり。
 朱夏特製のホットミルクはもちろん美味しくて、
 その、細長いお菓子も。朱夏と一緒に食べたなら、想像の何百倍も美味しかった。



 朱夏と弓弦は手を繋ぎ、徒歩で、ちょっとそこまでの買い物デートをする。
 今日にちなんで細長クッキーチョコレートを二種類ずつ選んで買って、家に戻ったら、さっそくの細長クッキーチョコゲーム。
 いちご味のそれの、チョコ部分をどっちが口にするか。ふたりともお互いを想うあまりに譲らない。結局チョコのついてない部分を折り、ふたりでチョコの端をもぐもぐ。
 早く弓弦にキスがしたくて、クッキーチョコが邪魔です! くらいの勢いで食べ進める朱夏と、朱夏の勢いに驚きつつ照れくさいなり恥ずかしいなり僕もほんとはキスしてもらいたい、とぐるぐる考えた末にそっと瞼を閉じる弓弦。キス待ちの姿勢。
 朱夏は、弓弦のことをたまらなく可愛いと見つめながら、無事に食べきって唇へゴール。
 いちごチョコ味のキスを堪能したら、次は別の味。
 もう一回。
 そんなふたり。


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