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溺愛しゅかゆづ夫婦 8

 夕方でもすっかり外が暗いから、まるでもう夜遅いのかと勘違いしてしまう。
 夕ご飯を作りながら、ふっと不安になる。この家で、僕はひとり。……ううん、違う。不安を振り払うように、お味噌汁の味見をした。
 うん、たぶん大丈夫。
『もうすぐ帰ります』と、朱夏からにゃいんが来たばかりだ。大丈夫。外がどんなに暗くてもまだ夕方だし、僕はひとりぼっちなわけじゃない。

 ああ、ほら、帰ってきてくれた。
 僕は、キッチンの火をきっちり止め、玄関へと向かう。ああエプロン着たままだ、まあいいか。
 それより、早く。はやく貴方の顔が見たい、声が聴きたい。僕の愛しい旦那さま。
「弓弦、ただいま帰りまし――わ、っふふ」
「朱夏……! おかえり、」
 まだ靴も脱いでいない貴方に思わず抱きついて、それを笑いながらぎゅうっと受けとめてもらえることが嬉しくて、なにより、朱夏。朱夏が、きちんと帰ってきてくれる。
 この家に。僕のところに。
「かわいい甘えんぼさんですね。弓弦、ふふ、弓弦……会いたかったです。俺の愛しい弓弦」
「朱夏おかえり、僕も……僕も、貴方に会いたかった。今日もおつかれさま」
「はい。ありがとうございます。さ、貴女が冷えちゃったら大変です。行きましょう」
 靴を脱いだ朱夏が、ひょいっと僕を抱き上げる。彼の腕におさまって、彼の首に腕をまわして、そうしてまたぎゅっと抱きつく。なんだろう、好き。朱夏、貴方が大好き。
「とても良い匂いがしますね。今日も頑張ってご飯つくってくれたんですね、弓弦」
「うん。今日はお味噌汁が美味しいよ、たぶん」
「貴女の作ってくださったものはいつも美味しいです。楽しみですねえ、一緒に食べましょう。お風呂に入って、ああそう、今日はテレビで映画が見れますね」
「うん。そうだね」
 声を弾ませる貴方と一緒に、僕もわくわくと目を細めた。貴方とご飯を食べて、お風呂に入って、テレビを見て……そんな幸せな時間で、この夜も、満たされていく。
 今夜も、貴方と。


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