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溺愛しゅかゆづ夫婦 8

 ああ、少し、肌寒い。
 朝だ。起きなくては。起きて、ご飯の支度をして……でも、寒い。
 もぞもぞ慎重に身動ぎをして、朱夏の腕の中にしっかりと収まる。彼の胸もとに顔を埋め、うとうと、しばらく瞼を閉じる。

 ……。朱夏のための朝ご飯。朱夏のためのお弁当。

 よし。今度こそ、頑張って起きよう。ちょっと寒いだろうけれど、手足は朱夏のおかげでだいぶ暖まった。頭も冴えてきている。
 朱夏を起こさないように、と思いながら、そっと顔を上げる。
 きらきら、おひさまみたいに輝く金色の瞳と、ばっちり目が合った。

「おはようございます、弓弦。今日も可愛いですね」

 いたずらっぽく微笑む顔の、なんて憎たらしくて、格好いいことか。
 僕の顔が、ぼわっと熱くなる。途端に暑い。がばっと思いっきり起き上がり、にこにこしている朱夏を睨む。

「おはよう朱夏。コーヒーつくって。ほらはやく」
「あははっ、照れているんですね。可愛いな。もちろん、お作りしますよ」

 かわいい、かわいいって、うるさいな。耳がとろけてしまいそうになる。
 ゆっくりと起き上がった朱夏に、ぎゅっと抱きしめられ、額にキスをされて。ベッドから下りるときも、朝からご機嫌な朱夏の完璧なエスコートつき。
 ああもう、……ありがとう。朱夏。貴方と迎える朝は、こんなに幸せだ。
 今日も。


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