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溺愛しゅかゆづ夫婦 7

 くいくい。弓弦のきれいで可愛い指先が、俺の服を引っ張って俺を呼んでいる。
 どうしました、弓弦。ホットミルクでも飲みますか? と、彼女の頭を撫でようとしたら、

「朱夏、……む」

 ぱちり、ぱちり。弓弦はゆっくりと瞬き、何故か不満そうにする。

「こう……むむ……」
「?」

 もう一度。瞬いて、不満げで。どうしたのかな、まさか、目にゴミでも入って痛いのでしょうか?
 それは大変です、弓弦の美しい赤い瞳が傷つきでもしたら。

「……もういい。朱夏、」
「弓弦、っ――」

 心配になった俺が屈み、弓弦の瞳を覗き見たのと、
 なんだかやけっぱちっぽく呟いた弓弦が、俺の、まぶたに。ちゅ、とキスをしたのは、ほとんど同時のことで。
 ……え、弓弦、いま。とても良い香り……いえ、くちびるがやわらかく……いいえ、ああ、真っ赤に恥じらう顔が可愛い……弓弦のすべてが愛おしい、

「僕、やっぱりウィンクなんてできない」
「……あ。弓弦、」

 ふいって、そっぽ向いちゃわないでください。ねえ弓弦。どうしてそんなにかわいくて愛おしいのか、どうか俺に教えてください。
 押し黙ってしまった弓弦を、とにもかくにもぎゅうっと抱きしめて。それから。



 朱夏は。ばっちり、本当にばっちり、むかつくくらい最高に格好いいウィンクを決めて、もともと端麗すぎる顔を綻ばせた。

「貴女のはあとにじゅっきゅーん。ふふん、どうですか弓弦」
「…………」
「弓弦?」
「やりなおし」
「えっ」

 じゅっきゅーん、じゃないし。なんて。本当はそんなこと、どうでもいい。僕が、朱夏を見ていたいだけ。彼を独占したいだけ。


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