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溺愛しゅかゆづ夫婦 7

 寒い。こんなに急に寒くなることないのに。夜風が肌に突き刺さるみたいだ、と。貴方にくっつく。

「大丈夫ですか、弓弦」
「ん」

 僕の手をそっと握ってくれる朱夏。優しくて、あったかい。だから、大丈夫。……だいすき。



 寒いな、弓弦は大丈夫でしょうか。
 朱夏が目を覚ますと、弓弦はすぐ隣で、頭まで毛布をかぶっていた。

「おはようございます」
「おはよう、朱夏。もうちょっと待ってね……」

 すぐご飯作るから。弓弦は言う。その声が少し震えているのは、気のせいではないだろう。朱夏は優しく笑った。
 弓弦の細くてちいさな体を抱きしめ、冷えた脚に、自らの脚を絡める。もっとくっついてくれてもいいのに、弓弦は、俺を起こさないようにと気をつかったのだろう。そんなところもいじらしくて、愛おしい。朱夏の微笑みが深くなる。
 優しい弓弦をあたためるように、薄い背中を撫で、ゆるやかなベージュの髪を撫で、「大丈夫ですよ」と朱夏は言った。

「朝ごはん、今日は俺が作ります」
「え、でも」
「じゃあ、こうしましょう。もっとぽかぽかになるまで暖まって、ふたりで朝ごはんを作る。時間はまだありますから」

 ね、と弓弦の顔を覗き込むと、

「……うん。ありがとう、朱夏。……」

 弓弦も、そっと顔を上げ、朱夏を見つめて。その声はもう震えていない。彼女の赤い瞳が、きらきら、やわらかい光を抱いて煌めいている。とても美しい。

「朱夏、だいすき」

 ふわりと笑う幸せそうな表情。朱夏の胸は、どきりと跳ねる。どくどく淡く脈打つ胸で、朱夏はたまらずもだえた。嬉しい、幸せだ。俺に、こんなふうに笑いかけ、愛の言葉を贈ってくれる弓弦が、俺も大好きです。

「愛しています、弓弦」
「わふ。ふふ、うん。……あったかいね、朱夏」
「はい。とても、あったかいですね」

 愛しい愛しい衝動。朱夏は弓弦を強く抱きすくめる。弓弦からも、朱夏に、きゅっと抱きつく。脚ももちろん絡ませたまま。ふたりに隙間はない。
 ふたりは、はちみついりのホットミルクみたいに、優しく甘く笑いあった。


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