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溺愛しゅかゆづ夫婦 7

 恐竜パジャマでフードをかぶり、仮装のつもりの弓弦。

「がおー! ……なんて」

 両手の指を鉤づめのかたちに折って、脅すふり。急に恥ずかしくなったようで、苦笑する。
 そんな弓弦を目の前で見せられる朱夏の気持ちは、ただひとつ。――この、あんまりにも可愛らしくてたまらないひとを、どうしてくれましょう。
 トリックもトリートも関係ない。可愛すぎて、ストレート右パンチトリックだ。
 そこに、さらなる追い打ちがかけられる。

「恐竜と龍は違うけれど……僕も、りゅう。ほら朱夏、貴方とお揃いだ。龍の妻の竜。ふふん」

 ちょっと嬉しいな、だなんて。ふわふわ笑う弓弦は、自分のその発想や言動が、いかに朱夏を煽りたてるのかをしらない。
 なにからなにまで愛しい貴女。もう、この両腕では短いかもしれません。俺、今すぐ龍に戻って、尻尾と胴体で、弓弦をぐるぐる巻きに抱きしめたいです。
 そうやって俺の中に閉じ込めてしまいたい。
 そんな衝動――。

「弓弦」
「うん?」
「……とても可愛らしくて、とっても似合っています。本当にかわいい竜ですねえ喰べたい。お菓子を差し上げますから、ちょっと待っていて……」

 すべて本音だけれど、ぽろっと欲望も口をついた気がした。まあいいや、とサイドテーブルに手を伸ばす朱夏は、そこにあるミニチョコレートの包みを取ろうとして、

「む、お菓子……」

 なぜか不満げな弓弦の両手に、腕をぎゅっと掴まれて。

「朱夏、……いたずら、じゃなくていいの? 僕も貴方もお菓子なんて持ってない……じゃだめ?」
「…………」

 切なげな赤い瞳の上目遣い。
 天然もいい加減にしてください、内心で呟くのと同時に、朱夏の理性はぷつっと切れた。
 朱夏は美しい頬笑みを浮かべ、かわいいがすぎる弓弦を優しく優しく抱きしめる。弓弦の髪に頬ずりし、たどりついた耳もとへ、そっと囁きこんだ。

「じゃあどうぞ、いたずらしてください。弓弦」
「ひゃ、っ、くすぐったっ……」
「俺もいたずらをしますから。ふふ、ねえ、弓弦」

 理性をなくした龍って、こわいですよ。
 笑みをたやさない朱夏の瞳は、黄金色。ぎらぎら滾って、輝いて、弓弦という愛しいひとを捕食する一歩手前。とことん容赦なく慈しみ愛するいたずらを。だって、弓弦もそれを望んでいる。

「あ……あの、朱夏、僕もしかして」

 貴方を煽ったの? なんて――。
 天然もいい加減にしてください。


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