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溺愛しゅかゆづ夫婦 7

 弓弦が本を読んでいる。黙々と真剣そうな、かわいいとしい彼女と、めがね。
 本を読むときの弓弦は、めがねをかけていることがある。かけていない時もある。聞けば、その日の気分らしい。弓弦がそう言うので、きっとそうなのでしょう。

 俺はといえば、暇……というか、弓弦に構ってもらいたい。夜も遅いし、そろそろ一緒に寝ましょうよって、そして俺だけを見てほしい。
 だから、そっと手を伸ばす。

「……あ。朱夏? どうし……」

 彼女のめがねを慎重に手に取り、自分で、それをかけてみる。
 かけられなくはないが、ちいさい。弓弦はこんなにちいさな顔をしている。改めて知って、ふわふわ愛おしさが増す。よりいっそう、極限なく。
 いたずら心。弓弦が俺を見てくれて嬉しい。自ずと深くなる笑顔のままに、訊ねてみた。

「似合いますか?」

 すると弓弦は、

「っ……」

 ぽふん、と顔を真っ赤にさせて。ぷいっとあちらを向いてしまい、答えてくれなかった。

「えっ、弓弦? 弓弦、そんなに俺、めがね似合わないですか? あの、……怒ってます?」

 すみません、貴女のめがねを勝手に――
 言い終わる、そのまえ。くるりとこちらを向いてくれた弓弦からの、かるく触れるだけのキス。その唇はすぐさま離れ、淡雪の美しい指先が、俺からめがねを取り戻す。
 ぽつり、弓弦はつぶやいた。

「似合うけれど、僕の心臓がたりないから、だめ」
「心臓? 大丈夫なんですか? ちょっと、ゆづ」

 いいの、大丈夫、だからすこしほうっといて。
 そんな言葉が聞こえてきそうな、けれどもとても可憐なキスがもう一度。またもそっぽを向いてしまう弓弦の、ベージュの髪からのぞく耳が、ゆでだこみたいになっている。
 気づいて、それからは。

「弓弦! 弓弦、大好きです。愛しています。弓弦」
「っわ、わかったから、わかった。僕もすきだよ、朱夏」


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