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溺愛しゅかゆづ夫婦 7

「スイカが食べたいですねえ」

 朱夏が言う。僕は驚いた。
 どうして? と聞いてみる。季節はすっかり秋、涼しくなって、スイカはだいぶ遅いような。

「あれって、赤いでしょう?」
「? まあ、うん」
「貴女の瞳の色みたいでしょう?」
「……。はあ、朱夏」
「なんですか、弓弦、……わっ」

 ぽうっと夢見るような彼の表情が気に入らない。
 だって、僕は、ここにいるのに。僕の瞳はここにあるのに。
 ずいっと朱夏に顔を近づけ、その勢いのまま口づけて、急激に恥ずかしくなる。
 僕は慌てて顔をそらし、文句を言ってやった。

「……うわきもの」
「すみません」

 朱夏が、おろおろ、謝ってくる。

「そんなつもりは。弓弦、ちょっと、こっちを向いてください。弓弦、誤解なんです」

 ほんとうに浮気をしたひとみたいで、僕はこっそり笑った。偉大な龍の神さまが、こんなにうろたえるだなんて。
 それは、僕だけの特権だ。


「弓弦……俺……」
「ご、ごめん、朱夏。いじわる、しすぎた。スイカ、買いに行こう。僕、切るから」
「スイカより貴女がいいです。もちろん、貴女がいちばんです」
「うん。ごめん」
「いいえ、俺もこのまえ、バナナにやきもちしたばかりでしたね」

 ……僕たち、いっつも、こうなんだねえ。
 しばらくして、どちらともなく笑い出し、あとはぎゅってしてきすをして。


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