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『黒くて苦い液体』

少しこぼしてしまったテーブルを拭いてもらって上に、今度は違うコップにお茶を注いでもらった。


「...すみ、ま...せん」

「いいのよ、気にしないで」


クスクスと笑う女性に頰が火照るのを感じた。

まだ早かったんだろ、と馬鹿にした様な男の笑いに再度羞恥から頰が紅潮するのも感じた。死にたい。


「アタシ、ジーナっていうの。君、名前は?」

「っ、あ....ひいら、ぎ。しか、覚えてな、」


途切れ途切れの言葉を拾い上げてもらうしかない。

あまりにも長く喋ってないから、声帯がかなり衰えていて喋りづらい。

それを察してくれたのか、ジーナは無理しないで、と優しく微笑んでくれた。


「ねぇ千、どうするつもりなの?」


セン、というのはこの男のことだろうか。

んー?、と生返事をした。


「どうって、仕事に使うに決まってるだろ。」

「はぁ!?」


テーブルを両手で強く叩き、ガタンと立ち上がったジーナ。

俺は買われたんだから、売春目的か労働だろうなとは思っていた。

だから特別驚きはしない。寧ろその音に驚いた。


「どういうつもりなの!?この子はまだ子供なのよ!?」

「子供も大人も関係無いことを、お前が一番理解している筈
だが?使えればそれでいい。」


喉で言葉を詰まらせた様に険しい顔をした後、はぁ、と深く息を吐き、とすんと椅子に座り直したジーナ。

信じられない、とでもいう様に肘をついて頭を抱える。


「こいつの目を酷く気に入ってしまってな。私が責任とって使い物にするから安心しろ。」


男は一瞬俺を見て薄く笑ってみせた。
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