『煙のにおいとないすばでぃー』
男の黒くて車高の低い車に乗り込んだ。
バタンっ、と大きな音を立てて扉が閉まると、男が反対側の運転席の方から乗り込んでくる。
男がどさりと座り込み、また扉を強く閉めると少し揺れた。
知らない鼻歌を歌いながら、男がキーを差し込みエンジンを掛けると、車体が振動し始める。
一度大きく煙を吹かせると、車はすごいスピードで走り始めた。
景色が後ろへ吹っ飛んで行くのを、窓に食い入る様に眺めていた。
男は信号が黄色になっても何食わぬ顔で走り抜けるから少し怖かったけど、窓から見える景色をまだ見ていたかったので、何も言わないことにした。
流石に、赤信号では止まるみたいだ。
荒っぽい運転とは裏腹に、緩くブレーキを踏む男は、車が完全に止まってから、ダッシュボードから携帯用の灰皿を取り出してくわえていた煙草をすり潰して捨てた。
灰皿をパチンと閉じて、再びダッシュボードに投げ入れる様子を見て、少し煙くさかったのでありがたいなと思っていると、男は胸元から煙草のケースを一つ取り出し、口で器用に引っ張り出して火をつけるので、俺は肩を小さく落とした。
今までは、大きな通りを通っていたけど、だんだんと狭い道を通り始めた。
住宅地を抜けて、さらに人通りのない所へ車が進むので、少し怖くなってきた。
窓から目をそらし、自分の左腕をぎゅっ、と掴む。
すると男が、
「もう着くぞ」
と、器用に咥えている煙草を落とさずはにかむで、少し訝しい気分になった。
バタンっ、と大きな音を立てて扉が閉まると、男が反対側の運転席の方から乗り込んでくる。
男がどさりと座り込み、また扉を強く閉めると少し揺れた。
知らない鼻歌を歌いながら、男がキーを差し込みエンジンを掛けると、車体が振動し始める。
一度大きく煙を吹かせると、車はすごいスピードで走り始めた。
景色が後ろへ吹っ飛んで行くのを、窓に食い入る様に眺めていた。
男は信号が黄色になっても何食わぬ顔で走り抜けるから少し怖かったけど、窓から見える景色をまだ見ていたかったので、何も言わないことにした。
流石に、赤信号では止まるみたいだ。
荒っぽい運転とは裏腹に、緩くブレーキを踏む男は、車が完全に止まってから、ダッシュボードから携帯用の灰皿を取り出してくわえていた煙草をすり潰して捨てた。
灰皿をパチンと閉じて、再びダッシュボードに投げ入れる様子を見て、少し煙くさかったのでありがたいなと思っていると、男は胸元から煙草のケースを一つ取り出し、口で器用に引っ張り出して火をつけるので、俺は肩を小さく落とした。
今までは、大きな通りを通っていたけど、だんだんと狭い道を通り始めた。
住宅地を抜けて、さらに人通りのない所へ車が進むので、少し怖くなってきた。
窓から目をそらし、自分の左腕をぎゅっ、と掴む。
すると男が、
「もう着くぞ」
と、器用に咥えている煙草を落とさずはにかむで、少し訝しい気分になった。