『久しぶり_』
しばらくの追いかけ合いが続いた。
建物の奥へ奥へ。
崩れた階段を飛び、穴の空いた床を蹴る。
撃ち撃たれ、避けられ避けてを繰り返しては走り回る。
2、3階を上がったり下がったり。
八咫は途中で俺たちを追いかけるのはやめたみたいだ。
2階の廊下ですれ違うたびに、頑張れ〜、と呑気に声をかけてくる。
ついにロウは屋上へ逃げた。
俺もあとを追って階段を駆け上がる。
勢いよく扉を開けたが、いくら辺りを見渡してもロウの姿は見えない。
ヒョォっ、と強い風の音が聞こえた。
血で少し濡れた右頬がひやりとする。
ふと、俺の足元で影が動くのが見えた。
はっ、として上を向くと同時に銃を掲げたが、遅かった。
ふわりと降りて来たロウは、俺の両腕を掴み、銃を落とさせる。
手首に込められる力が強くて、低く呻くとロウは楽しげな笑みを浮かべた。
「ほらほら、得物を無くした後はどうするんだ?」
小馬鹿にしたような言い方にイラっとして、手首をひねり、ロウの手を逆に掴み返して引っ張りつつ相手の腿、腹、肩と順に蹴り、鉄棒で逆上がりでもするかの様に一回転して着地する。
少し後ずさったロウから逃れ、落とした銃を拾おうとしたが、そんな暇を与えもらえる筈もなく、再び組み掛ってきた。
パチンっ、と取り出された折りたたみ式のナイフは太陽の光を反射し銀色に強く光っている。
ヒュッ、と風を切る音がして、ナイフが可能な角度から幾度も突き出される。
それを素手で受け流したり躱したりしながら隙を探るが、なかなか現れない。
ふと、ナイフとロウの顔を見比べた。
逆光の中見えたロウは、いつもの様にサングラスをかけていた。
今日は酷く晴れていて、そして今は日光が容赦無く降り注ぐ昼下がりだ。
「(あ、)」
俺は一か八か、太陽に背を向ける様に移動した。
それに合わせて、ロウも俺の正面に回り込む。
つまりはまぁ、ロウに太陽の方へ向いてもらったのだ。
そしてなんとかタイミングをはかり、攻撃の隙間でロウの眉間を狙って手をふりあげた。
宙に飛んだサングラスは、カシャン、と小さく音を立ててアスファルトに落ちる。
突然直接目に入って来た太陽の強い光に、ロウが目を細めた
その一瞬。
今まで受け身になって引いていた体を一気に引き戻して間合いを詰め、ロウのナイフを握った右手と首を掴み、足をかけて組み倒す。
熱く焼かれた硬い床にロウの背中がつくと同時に、反動でその手からナイフが落ちる。
脚を絡めて動きを封じ、右肩を押さえつつ首を掴む手に力を込める。
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、ロウを見る。
首に流れた一筋の汗がすごく官能的で背筋がゾクリとした。
いつもサングラスをしているからか、直接ロウのこの金色の光を放つ瞳を見るのは久しぶりだ。
「お前の勝ち、だな__」
建物の奥へ奥へ。
崩れた階段を飛び、穴の空いた床を蹴る。
撃ち撃たれ、避けられ避けてを繰り返しては走り回る。
2、3階を上がったり下がったり。
八咫は途中で俺たちを追いかけるのはやめたみたいだ。
2階の廊下ですれ違うたびに、頑張れ〜、と呑気に声をかけてくる。
ついにロウは屋上へ逃げた。
俺もあとを追って階段を駆け上がる。
勢いよく扉を開けたが、いくら辺りを見渡してもロウの姿は見えない。
ヒョォっ、と強い風の音が聞こえた。
血で少し濡れた右頬がひやりとする。
ふと、俺の足元で影が動くのが見えた。
はっ、として上を向くと同時に銃を掲げたが、遅かった。
ふわりと降りて来たロウは、俺の両腕を掴み、銃を落とさせる。
手首に込められる力が強くて、低く呻くとロウは楽しげな笑みを浮かべた。
「ほらほら、得物を無くした後はどうするんだ?」
小馬鹿にしたような言い方にイラっとして、手首をひねり、ロウの手を逆に掴み返して引っ張りつつ相手の腿、腹、肩と順に蹴り、鉄棒で逆上がりでもするかの様に一回転して着地する。
少し後ずさったロウから逃れ、落とした銃を拾おうとしたが、そんな暇を与えもらえる筈もなく、再び組み掛ってきた。
パチンっ、と取り出された折りたたみ式のナイフは太陽の光を反射し銀色に強く光っている。
ヒュッ、と風を切る音がして、ナイフが可能な角度から幾度も突き出される。
それを素手で受け流したり躱したりしながら隙を探るが、なかなか現れない。
ふと、ナイフとロウの顔を見比べた。
逆光の中見えたロウは、いつもの様にサングラスをかけていた。
今日は酷く晴れていて、そして今は日光が容赦無く降り注ぐ昼下がりだ。
「(あ、)」
俺は一か八か、太陽に背を向ける様に移動した。
それに合わせて、ロウも俺の正面に回り込む。
つまりはまぁ、ロウに太陽の方へ向いてもらったのだ。
そしてなんとかタイミングをはかり、攻撃の隙間でロウの眉間を狙って手をふりあげた。
宙に飛んだサングラスは、カシャン、と小さく音を立ててアスファルトに落ちる。
突然直接目に入って来た太陽の強い光に、ロウが目を細めた
その一瞬。
今まで受け身になって引いていた体を一気に引き戻して間合いを詰め、ロウのナイフを握った右手と首を掴み、足をかけて組み倒す。
熱く焼かれた硬い床にロウの背中がつくと同時に、反動でその手からナイフが落ちる。
脚を絡めて動きを封じ、右肩を押さえつつ首を掴む手に力を込める。
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、ロウを見る。
首に流れた一筋の汗がすごく官能的で背筋がゾクリとした。
いつもサングラスをしているからか、直接ロウのこの金色の光を放つ瞳を見るのは久しぶりだ。
「お前の勝ち、だな__」