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『ロウのサービスと5発目の弾』

階段を4、5段飛ばしながら駆け上がり、壁に手をつきながら方向転換し、探す。

後ろからは俺達を追いかけて階段を登ってくる八咫の足音がする。


視界の端にロウの姿が映らないものかとあたりを見渡してみるも、見当たらない。

一度息を深く吐いて、くっ、と呼吸を止めた後、顔を上げて目を閉じ神経を集中させる。


自分から意識を遠ざけ、八咫の気配を感じ、脳内のマップをさらに奥へ奥へと進み、ロウの気配と少しの殺気を探す。

意識を聴覚に集中させ耳を澄ませてみれば、今見えている角を左に曲がって突き当たりに見える部屋でカチャリと音がしたのが聞こえた。

半壊状態だった部屋の扉に、なけなしの鍵をかけるロウの姿が想像できる。

この場で音を立てたのはロウなりのサービスと言ったところか。





ロウが鍵をかけたであろう部屋の前まで来ると、俺は扉を手で開けようともせず、足で蹴り破った。

バキィ、と派手な音がなって二つに割れる。





___迂闊だった。


扉の破片の隙間から、スコープ越しの獣の様な瞳がこちらを見ている。

俺が入って来るのを、扉のすぐ横で待ってたんだ。


ロウが、ニイッ、と笑ったのが見えた。

トリガーに指をかけられる前に、なんとかしゃがみ込み弾を避ける。

しかし、2発、3発と続けざまに撃たれ、前へ転がる様にして避けたが、5発目が丁度頬を掠めた。


再び手を付いた時に、ふっ、と右手に力を入れて側転する。

左足がつくと同時にロウの方を振り返り銃口を向けハンマーをおろすと、高く笑いながら部屋を出ていくロウの背中が見えた。

クソッ、と思って銃を構え直し、スコープを覗いてみたが、またすぐに角を曲がられてしまったので深追いもできず。


右頬から薄く垂れる血を裾で拭い、口汚く罵り捨てて俺も走り出した。
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