③バンパイア・クリスマス
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4章
町はすっかりクリスマスムードなのに、僕の周りだけがそれとは無縁だった。クレプスリーなんて「人間のくだらん習慣だ」と鼻先で笑う始末だ。
ひとりで街に出かけた。プレゼントを買いたいなんて言えば二人に詮索されそうだから、「散歩してくる」とだけ伝えて出てきたけれど、むしろちょうどよかった。
――クリスマスに、エブラには思い出を。ネアには、もう一度楽しさを。
ショーウィンドウを眺めていた時、一人の女の子がつかつかと近寄ってきた。黒髪が長く、少し浅黒い肌の女の子。年は僕と同じくらいだろうか。
「ねぇ、船長さん」
「え?」
「その服のことよ。かっこいいわね、海賊みたい。お店に入るの?それとも見てるだけ?」
突然の問に驚いたけれど、「プレゼントを探してるんだ」と正直に答えた。
「それなら、CDは?音楽が好きならだけど」
「うーん、あんまり聴かないけど……CDプレーヤーなら、新しく聴き始めるきっかけになるかも!」
「CDプレーヤーって高いのよ?」
「大切な相手なんだ。高くたって構わないよ」
僕がそう言うと、彼女はニッと笑って手を差し出してきた。彼女は、手袋をなくしてしまって似たものを探していたらしい。寒い中、息を吐きながら手を擦る姿が少し気の毒だった。
「あたし、デビー。あなたは?」
「ダレン。よろしく。この店はもう覗いたの?」
「ううん、まだ。もしなんならプレゼントを選ぶのを手伝ってあげる」
そうと決まればと僕は店の重たいドアを開けてデビーに先に入るように促すと、彼女はくすくすと笑いだした。
「あらやだ、ダレンったら。あたしに気があるんだと周りに思われるわよ」
「!?」
そんな気は全くなかったのにそう言われるなんて、恥ずかしくて顔が熱くなった。
「……で、誰にあげるの?」
「えっと、1人は男の子、もう1人は女の子」
デビーはじっと僕の顔を見てから、口元をにやりとさせた。
「もしかして、一緒にいたあの人?」
「僕たちの事知ってるの?」
「何度か見かけたもの。あなたと、ブロンド髪の女の子と、緑の髪の男の子。仲がよさそうだったから」
「あはは、そっか……」
やはり、エブラのあの着膨れした服装が目立っていたのかと僕は内心ヒヤヒヤした。帰ったらネアに相談しよう。
デビーは、僕たちが泊まっているホテルから程近い場所に最近引越してきたそうで、慣れない土地に出かける気もなく、暫くの日は自室の窓から外を眺めていたところ、最近僕たちを見掛けるようになったと話してくれた。
「一緒に住んでるの?家族?」
その一言に、ハッとした。……家族。
「……うん、そんな感じ。いろいろあって、今は一緒に暮らしてるんだ」
「ふぅん……。でもあんまり似てなかった気がするけれど」
「そりゃそうだよ、僕たち、連れ子だもの」
口にしてから、「しまった……!」と思った。見た目が違うのは確かだが、理由を言ったのは予定だったかもしれない…。
でも他に、どう言えばいいのか分からなかった。まさか、“バンパイアの仲間だよ”なんて絶対に言えないし!
でもデビーは特に疑う様子もなく、ふぅん、とだけ零してまた店内の商品へと気を向けた。
結局、今日は何も買わずに店を出た。空はもう暗くなりかけていて、街灯や家々の窓に灯りが灯り始めていた。
彼女の家の前まで送れば、「ちょっと寄っていかない?」と誘われたけれど、ネアに「遅くならないように」って言われてたから断った。
「じゃあ、明日また会わない?引っ越してきたばかりで、まだ知り合いが少ないの。映画とか行きたいし……あっ、あの2人を紹介してよ!私も友達になりたい!」
「うーん、……いいよ。たぶん、喜ぶと思う」
僕がそう答えると、彼女はその場で嬉しそうにくるくると跳ねた。デビーならエブラやネアに会わせてもいいだろう。
「それで、私に聞かないの?」
「聞くって、何を?」
「だから、“映画に行きませんか?”って、私を誘うのよ」
「え、でもさっき……」
「女の子はね、自分から男の子を誘ったりしないの」
僕はぽかんとしたまま見つめた。すると彼女は、今度はわざとらしく頬に指をあてて言った。
「ほら、早く誘って」
「……じゃ、じゃあ……デビー、僕と映画に行かない……?」
「うーん。そうね。……考えておくわ!」
彼女は涼しい顔でそう言って、さっさとドアを開けて家の中に入ってしまった。
「……えぇっ!?」
誘うように仕向けてきたのはそっちじゃないか!?
――女の子って、なんてやっかいなんだろう!!
町はすっかりクリスマスムードなのに、僕の周りだけがそれとは無縁だった。クレプスリーなんて「人間のくだらん習慣だ」と鼻先で笑う始末だ。
ひとりで街に出かけた。プレゼントを買いたいなんて言えば二人に詮索されそうだから、「散歩してくる」とだけ伝えて出てきたけれど、むしろちょうどよかった。
――クリスマスに、エブラには思い出を。ネアには、もう一度楽しさを。
ショーウィンドウを眺めていた時、一人の女の子がつかつかと近寄ってきた。黒髪が長く、少し浅黒い肌の女の子。年は僕と同じくらいだろうか。
「ねぇ、船長さん」
「え?」
「その服のことよ。かっこいいわね、海賊みたい。お店に入るの?それとも見てるだけ?」
突然の問に驚いたけれど、「プレゼントを探してるんだ」と正直に答えた。
「それなら、CDは?音楽が好きならだけど」
「うーん、あんまり聴かないけど……CDプレーヤーなら、新しく聴き始めるきっかけになるかも!」
「CDプレーヤーって高いのよ?」
「大切な相手なんだ。高くたって構わないよ」
僕がそう言うと、彼女はニッと笑って手を差し出してきた。彼女は、手袋をなくしてしまって似たものを探していたらしい。寒い中、息を吐きながら手を擦る姿が少し気の毒だった。
「あたし、デビー。あなたは?」
「ダレン。よろしく。この店はもう覗いたの?」
「ううん、まだ。もしなんならプレゼントを選ぶのを手伝ってあげる」
そうと決まればと僕は店の重たいドアを開けてデビーに先に入るように促すと、彼女はくすくすと笑いだした。
「あらやだ、ダレンったら。あたしに気があるんだと周りに思われるわよ」
「!?」
そんな気は全くなかったのにそう言われるなんて、恥ずかしくて顔が熱くなった。
「……で、誰にあげるの?」
「えっと、1人は男の子、もう1人は女の子」
デビーはじっと僕の顔を見てから、口元をにやりとさせた。
「もしかして、一緒にいたあの人?」
「僕たちの事知ってるの?」
「何度か見かけたもの。あなたと、ブロンド髪の女の子と、緑の髪の男の子。仲がよさそうだったから」
「あはは、そっか……」
やはり、エブラのあの着膨れした服装が目立っていたのかと僕は内心ヒヤヒヤした。帰ったらネアに相談しよう。
デビーは、僕たちが泊まっているホテルから程近い場所に最近引越してきたそうで、慣れない土地に出かける気もなく、暫くの日は自室の窓から外を眺めていたところ、最近僕たちを見掛けるようになったと話してくれた。
「一緒に住んでるの?家族?」
その一言に、ハッとした。……家族。
「……うん、そんな感じ。いろいろあって、今は一緒に暮らしてるんだ」
「ふぅん……。でもあんまり似てなかった気がするけれど」
「そりゃそうだよ、僕たち、連れ子だもの」
口にしてから、「しまった……!」と思った。見た目が違うのは確かだが、理由を言ったのは予定だったかもしれない…。
でも他に、どう言えばいいのか分からなかった。まさか、“バンパイアの仲間だよ”なんて絶対に言えないし!
でもデビーは特に疑う様子もなく、ふぅん、とだけ零してまた店内の商品へと気を向けた。
結局、今日は何も買わずに店を出た。空はもう暗くなりかけていて、街灯や家々の窓に灯りが灯り始めていた。
彼女の家の前まで送れば、「ちょっと寄っていかない?」と誘われたけれど、ネアに「遅くならないように」って言われてたから断った。
「じゃあ、明日また会わない?引っ越してきたばかりで、まだ知り合いが少ないの。映画とか行きたいし……あっ、あの2人を紹介してよ!私も友達になりたい!」
「うーん、……いいよ。たぶん、喜ぶと思う」
僕がそう答えると、彼女はその場で嬉しそうにくるくると跳ねた。デビーならエブラやネアに会わせてもいいだろう。
「それで、私に聞かないの?」
「聞くって、何を?」
「だから、“映画に行きませんか?”って、私を誘うのよ」
「え、でもさっき……」
「女の子はね、自分から男の子を誘ったりしないの」
僕はぽかんとしたまま見つめた。すると彼女は、今度はわざとらしく頬に指をあてて言った。
「ほら、早く誘って」
「……じゃ、じゃあ……デビー、僕と映画に行かない……?」
「うーん。そうね。……考えておくわ!」
彼女は涼しい顔でそう言って、さっさとドアを開けて家の中に入ってしまった。
「……えぇっ!?」
誘うように仕向けてきたのはそっちじゃないか!?
――女の子って、なんてやっかいなんだろう!!
